事例ベース推論によるソフトウェア設計ノウハウの再利用支援システム
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概要
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Conklinによれば、ソフトウエアの保守に要する費用は、ライフサイクル全体での開発コストの約75%にも及ぶという。また、保守に要する費用の約50%は、既存ソフトウェアを理解するための工程「再設計」に要するものだという。一方、Curtisら[2]は、設計時におけるコミュニケーションとコーディネーションの不足がもたらす「ゆゆしき問題」を示した。このことは、設計上の意思決定に充分議論を尽くすことの必要性と、その折の意思決定の根拠をソフトウェアの保守時に参照できるような枠組みの必要性を示している.これらのことから、Conklin らは設計上の意思決定における議論の状態遷移を構造的に表現するためのモデルIBISを提案した。IBISでは、設計プロセスを構成する主要な構成要素は、顧客・設計者・インプリメンタなどの間での会話であるとし、これらの間の会話を図2のようなIssue-Position-Argumentという枠組みで表現する。これは、設計上の論点(Issue)に対して、それぞれの専門家からの複数の意見表明(Position)がなされ、各表明に対して賛否の議論(Argument)がそれぞれ展開されるという考え方に立っている。そして、これらの会話による非公式な情報の獲得を支援し、得られた膨大な情報を組織化し検索するためのツールとしてgIBISを開発した。しかし、IBISの枠組みは、グループによるソフトウェア開発作業には適合しない部分もある。そこで、本稿では、グループによるソフトウエア開発作業により良く適合させるために、IBISをいかに改良すべきかについて最初に議論する。次に、改良型IBISの利用場面としてのソフトウェア分散協調開発と、そこで進められる協調的なソフトウエア設計過程について考察する。最後に、改良型IBISで記述されたソフトウェア設計上の意思決定とその根拠などを、ソフトウエア設計のノウハウとして蓄積しておき、事例ベース推論によって、類似ソフトウエアの開発時や既存ソフトウェアの保守時に再利用するシステムについて考察する。
- 社団法人情報処理学会の論文
- 1992-09-28
著者
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