英語表現単位対応の日本語構文記述を用いた日英翻訳方式
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概要
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従来、ルールベースの機械翻訳システムは形態素・構文解析、意味解析、変換、生成の各フェーズを経るトランスファー方式を基本に実現されてきた。しかし、翻訳結果を得るという目的に限れば、深い解析が必要のない場合も多いことが指摘されている。我々も、多段翻訳の考えに基づいてトランスファー方式を発展的に見直し、慣用表現, 機能動詞結合など、意味解析型翻訳の拡張を進めてきた。しかし、使用頻度の高い「なる」「する」などの一部の和語動詞や、仮定法などの英語の特殊な表現に対応する日本語を翻訳する場合には、その表層条件が構文木上に散在しているため、従来の結合価をもとにした解析・変換では十分に取り扱うことができなかった。現在我々は、グローバルな条件を取り扱うために、任意の日本語構文木を直接翻訳する機能(広域直接翻訳)の日英翻訳システムALT-J/Eへの組み込みを進めている。散在している条件を参照するには、構文木上の任意の要素を参照できるルール照応機能が必要である。また、意味解析のためには構文木を名詞句などの単位に分割する必要があるが、このルールはその分割前に適用されなくてはならない。そのため、意味解析を行なわない構文木への直接ルール照応を導入する。広域直接翻訳の照応機能は木と木のパタンマッチであり、この機能のみでも翻訳実験システムを構築することは可能であるが、実用的な翻訳システムに採用するには以下の点で不利である。・どのような構造も同等な単なる木構造として扱うため、構造の特性を生かしたルール記述ができず、効率・ルール作成の容易さの点で不利である。・すべての言語現象をパタン化することは非現実的であり、ルールの網羅性の保証が困難である。上記は従来の意味解析型翻訳の利点の裏返しである。両者の利点を組み合わせるために、広域直接翻訳は構文木上の長距離依存関係を含むなど、意味解析型翻訳の能力を超える表現を主に扱う。これらの表現を文の骨格構造と呼ぶ。対して、意味解析型翻訳は葉の部分の翻訳を担当する。この場合、どのように両者に親和性を持たせるかが問題となる。本稿では、従来の意味解析型翻訳と広域直接翻訳の融合方法の実現について報告する。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1994-03-07
著者
-
白井 諭
国際電気通信基礎技術研究所
-
松尾 義博
Ntt
-
中村 三紀
NTTアドバンステクノロジ
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松尾 義博
NTT情報通信網研究所
-
白井 諭
NTT情報通信網研究所
-
横尾 昭男
NTT情報通信網研究所
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