Escherichia属細胞No. 1768の生産する多糖
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概要
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土壌から分離したEscherichiaの属細菌No. 1768をでんぷんまたはグルコース5%, コーンスティープリカー 0.05%, 尿素 0.3%, KH_2PO_4 0.1%, MgSO_4・7H_2O 0.05%, CaCO_3 1%の培地で30°, 2〜3日間振盪培養し, 培養修了液な水で稀釈し遠心分離により菌体および固形物を除去後, Ca^<++>の存在下で3倍量のアセトンまたはエタノール中に注ぎ, 粘質物を沈澱させる.この操作をくりかえし, 減圧乾燥して粗多糖をえた.収量, でんぷんまたはグルコースの約30%.この粗多糖を超遠心でしらべたところ第1図のように単一ではなかったので, 粗多糖をアセチル化後, クロロホルム可溶区分と不溶区分に分別した.アセチル化多糖のクロロホルム可溶区分を1Nエタノール性苛性カリ溶液で脱アセチル化し, 精製多糖とした.精製多糖を超遠心でしらべた結果, 第2図に示すようにone peakであることが認められた.精製多糖はゾーン電気泳動でもone spotであった.この精製多糖をセファデックスG-150のカラムを用いてゲル濾過を行なった.0.1N NH_4HCO_2で溶出し, 各区分の炭水化物含量をAnthrone法で定量し, 溶出曲線を作成したところ第3図に示すとおりone peakであった.これらの結果からこの精製多糖は単一であると考えられる.この多糖の酸分解物をペーパークロマトグラフィー, ペーパーエレクトロフォレシスでしらべたところグルコース, マンノース, ラムシースのほかに2種の未確認糖が認められた.R_G 1.38,M_G 0.94の糖が結晶がえられ, 融点136°, 〔α〕^<20>_D-3.9°, ニンヒドリン反応陽性であった.R_G 0.84,M_G 0.97の糖は完全酸水解の条件で加水分解しても分解を受けないので酸に抵抗性のオリゴ糖と思われる.そこでこの多糖の構成糖のモル比の分析には多糖を加酢分解後酸分解した試料についてペーパークロマトから各糖を溶出し, Anthrone法で定量したところグルコース, マンノース, ラムノースの比は約5 : 3 : 2であった.この多糖を部分分解(酸分解, 加酢分解)してペーパークロマトグラフィーでしらべた結果, グルコース, マンノース, ラムノース, マルトース, マルトトリオースのほか数種のオリゴ糖を認めた.多糖の加酢分解物を活性炭カラムクロマトグラフィーで分別し, 各区分を減圧濃縮してペーパークロマトグラフィーでしらべた結果は第4図のとおりで多糖の加酢分解物からグルコース, マンノース, ラムノース, マルトース, マンノシルグルコース, グルコシルマンノースおよび11種のオリゴ糖を認めた.そのうちマルトースおよび4-O-β-グルコシルマンノースはアセチル化物として結晶状に分離確認した, 4-O-β-マンノシルグルコースは遊離糖として結晶状に分離確認した.以上のことからこの多糖はα-結合とβ-結合の両者を含むものと思われる.ペーパークロマトグラフィーによりこの多糖はマロン酸を含有することが認められ, その含有量は0.21%であった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1973-06-25
著者
-
小林 幹彦
東北大農化
-
小林 幹彦
東北大学農学部農芸化学科
-
松田 和雄
東北大農化
-
松田 和雄
東北大学農学部 農芸化学科
-
渡辺 敏幸
東北大学農学部農芸化学科
-
瀬口 正晴
東北大学農学部農芸化学科
-
志田 万里子
東北大学農学部農芸化学科
-
安藤 拓司
東洋醸造株式会社研究所
-
永田 明穂
東洋醸造株式会社研究所
-
渡辺 敏幸
東北大学農学部農産利用学研究室
-
渡辺 敏幸
東北大農化
-
小林 幹彦
東北大 農
-
松田 和雄
東北大学農学部
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