有機酸生成酵母の分類学的研究
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概要
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近時, グルコースおよびn-パラフィンから多量の有機酸を蓄積する酵母がCandidaとして報告されているので, 酸生成の分類学的意義について再吟味をおこなった.IFOに保存しているCandida属49種221株およびBrettanomyces属4種5株の酵母標準株のうちCandidaの19種36株とBrettanomycesの全菌株が同じ様に, グルコースからかなり著量の有機酸を寒天培養基中に生成するのを認めた.これらの酸生成酵母は, 強い好気的条件下の振盪培養ではいずれもクエン酸およびイソクエン酸を蓄積し, 一方静置培養では例外なく, 主として醋酸とエタノールを生成した.すなわち, 顕著な酸生成はBrettanomyceas属にかぎられるものではなく, また生成する酸の種類においても両属の間には全く差がみとめられなかった.したがって有機酸の生成によるのみではBrettanomyces属を他の属から識別できないことが判明した.たゞし, 形態的性質において, 尖頭型細胞の存在がBettanomyces属の顕著でかつ安定な特徴であり, この属がこの性質によってのみ識別できることが確認された.さらにn-パラフィンからクエン酸を生成するものとして新たに分離された未同定酵母50株について, 分類学的検討をおこなったところ, これらはいずれもCandida属菌と判定でき, このうち30株はC.lipolytica, 16株はC. tropicalis, 2株はC. parapsilosis var. intermedia, 1株はC. brumptii, 1株はC. specと同定された.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1971-03-25
著者
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長谷川 武治
財団法人醗酵研究所
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飯塚 広
東京大学応用微生物研究所
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飯塚 広
東大応微研
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坂野 勲
(財)発酵研究所
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坂野 勲
発酵研究所(大阪)
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飯塚 広
東理大応生
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長谷川 武治
(財)発酵研究所
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