相模湾の沈み込み帯の冷湧水域に伴う炭酸塩類と化学合成独立栄養動物群集の環境
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概要
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これまで述べてきた相模湾初島沖の冷湧水とそれに伴う底生生物, 炭酸塩類の環境を図4に示す.初島沖の最大のシロウリガイ群集域とその北側の赤褐色変色域は伊豆半島東側斜面を削る谷地形の麓に位置する.変色域には火山岩がカルサイト・ドロマイトでセメントされた炭酸塩類が多量に分布し, かつ変色域の西側の転石には新鮮な火山岩が見られること等から変色域の地下には火山岩を主とする転石が堆積していると想定される.もちろん南側や北側のシロウリガイ群集域にも火山岩の転石は存在するが変色域ほど多くない.変色域は透水性が良いことから, 湧水の量も多く, 地下からの熱の伝搬もシロウリガイ群集域より多いのであろう.これらを確認するためには海底下の堆積物の音波探査や長い柱状コアの採集等が必要である.図5には相模湾の後背地の地層中の炭酸塩類で, これまでに湧水環境によると判明したものを含む地層とそのδ^<13>C値を示す.このように相模湾の後背地には, 最古の葉山層群(16.6〜13.6Ma)から現在に至るまでその沈み込みの中心をジャンプしながら, あるいは1時期は同時に存在しながら, 独立栄養動物群集と炭酸塩類で特徴づけられる"冷湧水"環境が存続してきたのである.
- 1996-06-30
著者
-
大場 忠道
北海道大学
-
秋元 和實
熊本大学沿岸域環境科学教育研究センター
-
蟹江 康光
横須賀市自然博物館
-
服部 陸男
海洋科学技術センター
-
大場 忠道
金沢大・教養
-
大場 忠道
北海道大学大学院地球環境科学研究科(北海道大学)
-
大場 忠道
北大地球環境研
-
秋元 和実
熊本大 沿岸域環境科学教育研究セ
-
秋元 和實
名古屋自由学院短大
-
服部 陸男
海洋センター・深海研
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