腫瘍マーカーCA125の血中漏出機構に関する考察

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概要

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卵巣癌を中心とした悪性腫瘍患者および良性卵巣腫瘍を中心とした良性疾患患者から得られた腹水, 胸水, 腫瘍内容液, 尿中の腫瘍マーカーCA125値を測定し, 同時に, 血清中で測定されたCA125値とを比較することにより, 良・悪性疾患間でのCA125血中移行にどのような差があるか検討した. また, CA125産生性卵巣漿液性嚢胞腺癌株(SHIN-3)のnude mouse背部皮下移植実験を試み, 発育した腫瘍サイズと血中CA125値との相関, およびその病理組織学的背景を検討した. 1. 腹水中CA125値について, 良性疾患では11,827.0±31,037.9IU/ml (mean±SD), 悪性疾患では9,623.5±16,097.1IU/mlと両者に有意差はなかった. 2. 腫瘍内容液中CA125値について, 良性疾患では83,597.8±201,141.7IU/ml(mean±SD), 悪性疾患では29,113.9±52,525.3IU/mlと, 良性疾患において高値を呈した. 3. 血清中CA125値は, 良性疾患で24.8±20.3IU/ml, 悪性疾患では2,178.6±5,729.7IU/mlと悪性疾患で著しい高値を示した. 4. CA125値の血中移行率(血中CA125値/腹水・胸水・腫瘍内容液中のCA125値)は, 良性疾患で0.79±1.62%(mean±SD), 悪性疾患で19.1±20.5%と有意に高値を呈した. 5. nude mouse移植腫瘍サイズと血清CA125値とには相関はみられず, 腫瘍の大きさにかかわらず, 血中CA125高値を示すものは, 腫瘍周囲被膜の破綻, 腫瘍細胞のvessel permiationといった病理組織学的特微がみられた. 組織におけるCA125産生量は良性・悪性疾患間でむしろ差は認められず, その血中漏出量において著しい差があることが確認された. nude mouseへの卵巣癌細胞移植実験から, CA125の血中漏出機構には, 主に腫瘍被膜の破壊に伴う組織構築の破壊といった癌組織に特徴的な病理組織学的背景が必要であることが推測された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1989-12-01

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