人胎盤絨毛膜小胞を用いた無機水銀のアミノ酸輸送に与える影響

概要

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水銀イオンの胎児胎盤系に対する有害性の作用機構を解析する目的で、満期人胎盤より分離した微絨毛膜小胞へのアミノ酸の取り込みに与える水銀イオンの影響について検討した。なお、微絨毛膜小胞内へのアミノ酸の取り込み量の決定は、ミリポアフィルターを用いた急速炉過法により行なった。1)L-alanineの微絨毛膜小胞内への取り込みは、Na^+電気化学的濃度勾配(小胞外>小胞内)に依存しており、0.1mMの水銀イオンは、このNa^+依存性のL-alanineの取り込みを77%障害した。一方、1mMの水銀イオンはこのNa^+依存性の取り込みを90%障害した。2)L-lysineの微絨毛膜小胞内への取り込みは、Na^+電気化学的濃度勾配には依存しておらず、0.1mMの水銀イオンは、L-lysineの小胞内への取り込みを34%障害し、一方、1mM水銀イオンは、L-lysineの小胞内への取り込みを50%障害した。以上の成績より、水銀イオンの胎児・胎盤系に与える有害作用の一つは、胎盤におけるアミノ酸輸送の膜輸送の障害であることが明らかとなった。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1987-02-01