人胎盤における胆汁酸の輸送機構の解明(微絨毛膜におけるタウロコール酸の受動輸送機構)

概要

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我々は満期正常人胎盤より分離した微絨毛膜小胞を用いて、各種アミノ酸、糖の移送を報告してきているが、今回はタウリン抱合型胆汁酸の一つであるタウロコール酸の胎盤輸送機構について検討した。1)タウロコール酸(TCA)の微絨毛膜小胞への取り込みは小胞外の浸透圧に感受性を示し、また、小胞にタウロコール酸の前負荷を施すと小胞内へのタウロコール酸の取り込みは促進した。以上の成績より、タウロコール酸の微絨毛膜小胞への取り込みは小胞内への実際の輸送を示していることが明らかとなった。2)タウロコール酸(TCA)の微絨毛膜小胞内への取り込みは、小胞内外のNa^+濃度勾配(extravesicular>intravesicular)には依存していなかった。しかし、この取り込みは、アニオン置換またはノミリノマイシンによって誘発された小胞内陽性の膜電位差が存在する時に著明に増加した。従ってタウロコール酸は陰イオン体(アニオン体)として膜輸送されていることが確認された。3)コール酸(CA)は小胞内へのタウロコール酸の取り込みを阻害した。一方、タウリソは取り込みを阻害しなかった。4)小胞内へのタウロコール酸の取り込み初速度はタウロコール酸(TCA)の濃度によって決まる飽和kineticsを示し、Km値としては67μM、Vmax値としては0.30n mol/mg protein/20secが得られた。以上の成績より満期人胎盤にはタウロコール酸の能動輸送機構は存在しないが、アニオン体としてタウロコール酸を輸送する受動輸送系が存在することが判明した。また、タウロコール酸の血中濃度は胎児側の方が母体側より高値であることからも、妊娠個体においてタウロコール酸は胎児側より母体側に輸送されていることを認めた。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-06-01

人胎盤における胆汁酸の輸送機構の解明(微絨毛膜におけるタウロコール酸の受動輸送機構)

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