ヒト子宮頚部組織における prostaglandin 生成能について : 妊娠性ステロイドの及ぼす影響

概要

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ヒト子宮頚部組織におけるprostaglandin(PG)生成能と,それに及ぼす妊娠性ステロイドの影響を調べる目的で次の実験を行ない,以下の成績を得た。 1) ステロイド環境の異なる頚部組織[非妊例,正常分娩例,早産例,胎盤性sulfatase欠損症(PSD)例]の105,000×g沈渣を酵素源とし,14^C-アラキドン酸を基質としincubationを行ない,蛋白量あたりのPGE_2及びPGI_2生成能を比較したところPGI_2生成能は非妊例6.48pmol/mg protein/hrに比べ,正常分娩例では42.93と著しく増加し,PSD例,早産例では比較的低値を示した。また,PGE_2生成能についても非妊例10.42pmol/mg protein/hrに比べ正常分娩例では60.63と明らかな増加えお認め,PSD例では比較的低値であった。2) 分娩第1期にDHA-S 600mgを投与した後,分娩に至ったDHA-S群と非投与正常分娩例との比較では,PGI_2,PGE_2共DHA-S投与例で高値を示し,特にPGE_2に関しては有意差を認めた。また,陣痛のない選択的帝切例でDHA-S投与前後の子宮頚部のPGI_2,PGE_2生成能を比較したところ,PGI_2,PGE_2共投与後に約2倍の増加を認めた。以上よりヒト妊娠子宮頚部組織のPG生成能が,妊娠性ステロイド特にDHA-S及びその代謝物であるエストロゲンと密接な関連を有することが示唆された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1987-09-01