妊娠初期における母体末梢血, 羊水及び絨毛組織中の各種steroid値の比較

概要

論文の詳細を見る
ヒト妊娠初期における羊水中 steroid環境を明らかにするため, 妊娠6週〜10週の正常妊娠婦人の人工妊娠中絶術施行時に, 羊水([A]), 母体末梢血([M]) 及び絨毛組織([C])を同時に採取しそれぞれについて progesterone (P_4), 17α-OH-progesterone (17P_4) 並びに非抱合型の estrone (E_1), estradiol (E_2), estriol (E_3)の5種steroidをradioimmunoassay (RIA法)により測定し, 以下の成績を得た. (1) 各週数における[M], [A]及び[C]steroid値の比較 : [C] (g wet tissue)では, [M](ml)及び[A](ml)に比し上記5種 steroidは高値を示した. (2) 各週数における[M]と[A] steroid値の比較 : P_4は[M]に比し[A]で有意に高く, 17P_4は逆に[A]に比し[M]で有意に高い. estrogen (Es)の非抱合型ではE_1が[A]で有意に高値で, 他は有意差を認めなかつた. (3) 週数増加による steroid 値の変化 : P_4ほすべての組織中で増加傾向を認め, 特に妊娠7週ごろに[A]で一時的なピークを示す. 17P_4は, [M]で妊娠8週ごろまで減少するが以後緩やかな増加傾向を認め, 他組織では特に変化を認めない. Esでは, [M]E_2が妊娠9週ごろより増加傾向を認め[A]より高値を示し, また[C]Esはすべて妊娠10週で増加傾向を認めた. (4) [A], [M], [C]steroid値の相関 : 測定した5種steroidの検体中濃度の間の相関を調べた結果, P_4は[A]と[C]間に, E_1とE_3は[M]と[C]間に正の相関をそれぞれ認めたが, その他には相関は認められなかつた. 以上の成績は, 妊娠初期のP_4産生部位は[C]が中心であることを示唆しており, また[A]濃度が[M]濃度よりも高値を示すことから[C]で産生されたP4は[M]よりも[A]に主に分泌されると考えられる. 一方[C]で産生されたEsは, P_4に比べて[A]への分泌が少ないことが示唆された. [A]のP_4値は[C]のP_4の産生量を反映しているが, Esには相関がみられないことから, EsとP_4とは[C]における産生と移行動態が異なつていることが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1988-05-01

妊娠初期における母体末梢血, 羊水及び絨毛組織中の各種steroid値の比較

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク