加齢による卵巣ステロイド代謝酵素活性の変化

概要

論文の詳細を見る
閉経後, 卵巣におけるステロイドホルモン (S) 産生は著明に低下するが, 末梢静脈血中におけるS値の測定や卵巣動静脈間のS値の差よりその産生が閉経後なお続いていることは良く知られている。しかし加齢による卵巣機能の変化をS代謝酵素活性より検討した報告は少ない。そこで婦人科開腹手術時に得られた各年齢の卵巣を月経を有するI群 (卵胞期中期, 黄体期中期, 月経不順期), 閉経後5年以上経過したII群に分類し, 組織検査の後に各S代謝酵素活性[17α-hydroxylase (17hy), C_<17-20> lyase, 20α(β)-hydroxy steroid dehydrogenase (20-HSD), 17β-hydroxy steroid dehydrogenase (17β-HSD), aromatase]を測定し両群を比較した。さらに閉経後も卵巣においてその活性を認めた20-HSD活性の細胞内局在について検討した。1) 組織像: I群ではすべての卵胞, 黄体組織を認めた。II群では線維化の進行した結合組織中に間質細胞が散在したがstromal hyperplasiaは認めなかった。2) S代謝酵素活性: I群の卵胞期中期, 黄体期中期卵巣では測定した5種の酵素活性のすべてを認めたが月経不順期になると17hy, C_<17-20> lyase活性はI群の月経不順期及びII群でも卵胞期中期と同程度の酵素活性を認め変化は少なかった。更にII群においてはI群で極めて弱かった20β-HSD活性が認められ17P_4より17α, 20β-OH-P_4の生成が初めて示された。3) II群卵巣における20-HSD活性の細胞内局在: II群卵巣を分別遠沈して得た各分画を酵素源とし17P_4を基質として培養した場合20α-HSD活性は105,000×G上清に, 20β-HSD活性はマイクロゾーム分画に局在した。以上, 加齢により卵巣のS代謝酵素活性は低下するがその変化は一様でなく, estrogenの低下はaromatase活性の低下のみならず17hy, C_<17-20> lyase活性の低下を介するestrogen前駆体供給の減少も関与していると推察された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1992-04-01

加齢による卵巣ステロイド代謝酵素活性の変化

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク