Human Menopausal Gonadotropin(HMG)による排卵誘発における卵巣ステロイド動態
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
HMG投与による排卵誘発例での排卵前における卵巣ステロイド動態を,末梢血中性ホルモン値の変動から検討した.対照として,正常排卵周期婦人7例につき,排卵前後1O日間経日的に採血,各種ホルモン値を測定した.排卵誘発例として,第2度無月経患者にHMGHCG療法を行い,頚管粘液検査によるHCGへの切り換え時に採血した。排卵誘発に成功した6例を第三群,排卵に至らなかった8例を第11群とし比較検討した.測定したホルモンは,LH,FSH,estradio1(E_2),progesterone(P_4),17αOH-P_4(17P_4)Δ^4androstenedione(Δ^4A),testosterone(Tes.),pregnenolone(P_5),17αOH-P_5(17P_5),DHA,Δ^5androstenedio1(Δ^5AD)及び20αOH-P_4(20P_4)の12種で,各種特異的抗体によるRIA法によった.1) 正常排卵周期におけるホルモン値:LHサージ前1日にE_2(380±16pg/ml),P_5(6.9±4.1ng/ml)及びTes.(3.3±1.2ng/ml)にピークが見られた.P_4, 17P-4, 17P_5及び20P_4はLHサージ後に上昇傾向を示し,P_4, 17P_5及び20P_4は排卵後にも有意に増加した.2) 正常排卵周期と第I群との比較:第I群では正常周期のLHサージの前3日間の値に比し,FSH及びE_2は有意の高値,LHは有意の低値を示した.Δ^4系ステロイド中20P_4, P_4, 17P_4及びΔ^4Aには差は認められないが,Tes.のみは有意の低値を示した.Δ^5系ステロイドでは,17P_5のみが有意の高値を示した.3) 第I群と第II群の比較:(1)FSH及びLH値には両群の差はない.(2)E_2値:II群では正常周期とI群の中間値であったが,I群とII群の間には有意の差はない.(3)Δ^4系ステロイドでは,P_4, 17P_4及びΔ^4A値はI群の方がII群よりも高値を示すも有意差はない.(4)Δ^5系ステロイドで,DHA及びΔ^5ADはI群がII群よりも高値を示すも有意差はないが,17P_5値はI群がII群より有意の高値を示した.以上より,正常排卵周期におけるΔ^5系ステロイドであるP_5及び17P_5は,卵胞の成熟と共に変動すること,並びに第2度無月経患者におけるHMGの卵巣刺激により,E_2の高値と共に17P_5の著明な上昇を伴うとの新しい知見から,HMGには芳香化促進作用以外に,Δ^5系生成経路を促進する作用も持つことが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-04-01
著者
-
清水 篤
水戸赤十字病院
-
平戸 久美子
昭和大学医学部産科婦人科学教室
-
矢内原 巧
昭和大学医学部産科婦人科学教室
-
中山 徹也
昭和大学医学部産科婦人科学教室
-
矢内原 巧
昭和大学医学部
-
中山 徹也
昭和大医
-
日高 輝幸
昭和大学医学部産科婦人科学教室
-
清水 篤
昭和大学医学部産科婦人科学教室
関連論文
- P-328 卵巣癌組織における癌抑制遺伝子p53とアポトーシス関連因子の存在と予後の検討
- 子宮内膜中ステロイド代謝酵素活性の月経周期による変化
- P-5 パラフィン包埋病理組織切片で免疫染色可能な抗エストロンサルファターゼモノクローナル抗体の特性
- 240 胎児の性差が母体のCa代謝に及ぼす影響について
- 更年期女性の自殺念慮への介入
- 婦人科癌に対するCBDCAを用いたCAP療法中の腎血流の評価
- 子宮筋Prostaglandin産生に及ぼす芍薬甘草湯の効果
- 胎児ストレス環境における胎児血流変化と羊水カテコラミン濃度の関連について
- P-57 卵膜におけるmonoamine oxidase (MAO)の生理的意義について : カテコラミンの代謝とその移行
- 228 羊水中におけるγ-aminobutyric acid (GABA)の生理的意義について
- 193 卵膜におけるmonoamine oxidase (MAO)活性の生理的意義について
- 産褥期における卵巣機能回復に関する研究
- 517 卵膜におけるphenylethanolamine-N-methyl-transferase(PNMT)活性について
- 117 妊娠子宮筋中のPNMT (phenyl-ethanolamine-N-methyltransferase)活性に及ぼす各種ステロイドの影響
- 15 分娩経過中の母体血中カテコルアミン値とコーチゾル値との相関関係について
- 70. 20α-dihydropregnenoloneのRadioimmunoassay法 : 第12群 妊娠・分娩・産褥 IV
- P-44 卵巣類内膜癌(EMC)におけるp53, K-rasの遺伝子異常のPCR-SSCPによる解析
- 73 卵巣明細胞腺癌におけるCA125の免疫組織化学的局在と組織構築、予後についての検討
- 腟平滑筋肉腫の1例と治療法に関する一考察
- 390 妊娠中毒症におけるヒト胎盤性estrogen 2-hydroxylation活性について
- 97 ヒト子宮内膜腺上皮細胞における副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)発現とその調節機序
- P-237 ヒト羊水中の副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTH-rP)の由来と生理的意義に関する検討
- 209 新生児副腎胎児層の退縮とアポトーシス細胞の発現について
- 前方視的な手法による妊娠末期の子宮頸管熟化と分娩経過に関する研究 : 第3報 : 妊娠末期のBishop scoreによる分娩時期ならびに予後の予測
- 前方視的な手法による妊娠末期の子宮頸管熟化と分娩経過に関する研究 : 第2報 妊娠末期のBishop scoreと分娩経過ならびに新生児所見
- 前方視的な手法による妊娠末期の子宮頸管熟化と分娩経過に関する研究 第1報 : 妊娠・分娩・産褥における母児の臨床統計
- 討論(卵胞発育の調節機構 : 局所因子を中心として)
- 討論 (子宮内環境と胎児)
- 1. 子宮収縮機構とその制御 : 討論
- 産褥期睡眠障害とマタニティブルーズの経時的推移に関する研究
- 超音波測定法による思春期男女の骨密度の年次変化の検討
- 体外受精における卵胞液中各種steroid濃度比と卵胞径およびembryo qualityとの関係
- 思春期女子の発育および筋力と各種ステロイドとの関係
- 思春期女子の初経発来時期と身体発育, 血中遊離型insulin-like growth factor-I, 性ステロイドホルモン値との関係
- 母胎血による胎児DNA診断
- 思春期女子の血中insulin-like growth factor binding protein-3 (IGFBP-3), proteolysed IGFBP-3(30KDa)および遊離型IGF-I値の推移について
- 卵巣過剰刺激症候群とVEGFとの関係
- P-482 ヒト乳癌組織における steroid sulfataseの局在 : 免疫組織化学的検討
- 分娩発来時期の胎児・胎盤・母体系ホルモンの動態
- 135 ヒト胎盤sulfataseの精製とその特性
- 532 骨芽細胞様細胞におけるステロイド産生能
- 516 羊水DHA-Sのヒト卵膜prostaglandin産生に及ぼす影響について
- 60 妊娠初期切迫流産予後良好例の内分泌環境
- 342 思春期におけるIGF-Iと身体発育及び性ステロイドホルモンの関係について
- ヒト胎盤における16α-OH steroidの代謝 : Steroid生成酵素の基質特異性について
- ヒト子宮頚部組織における prostaglandin 生成能について : 妊娠性ステロイドの及ぼす影響
- 214. ヒト子宮頚管組織のprostaglandin I_2生合成能について : 第37群 内分泌 IX
- 陣痛発来と羊水中各種steroid動態
- 子宮筋oxytocin感受性と血中及び子宮筋中steroid値
- 184.ヒト羊膜phospholipase A_2活性に対する各種妊娠性steroid-sulfateの刺激効果 : 第31群 内分泌-臨床VII (181〜186)
- 378.特殊な母体尿中estrogen低値例における羊水中steroid動態 : 羊水中steroidの起源に関する考察 : 第77群 胎児・新生児 IV(377〜380)
- 46.子宮筋Oxytocin感受性と母体血中ステロイド値 : 第9群 妊娠・分娩・産褥VI(42〜46)
- 分娩時ヒト子宮頚部のphospholipase A_2活性
- 母体血中各種ホルモン値による子宮内発育遅延の出生前診断
- 216.母体血中各種ステロイド値によるSFDの出生前診断法 : 第58群胎児・発育遅延
- 39. 子宮内膜中ステロイド代謝酵素活性の月経周期による変化 : 第7群 内分泌 I (37〜41)
- 83. ヒト子宮筋cytosolのDehydroepiandrosterone sulfate(DHAS)結合タンパクに関する研究 : 第14群 内分泌 II (79〜84)
- 加齢による卵巣ステロイド代謝酵素活性の変化
- 卵膜のステロイド代謝能
- 胎盤性Sulfatase欠損症の二例
- 80.卵巣周期による卵巣ステロイド代謝像の相違 : 第22群内分泌・卵巣I
- 300.胎児脳組織の5α-Reductaseに関する研究 : 第56群 胎児・新生児 生理 その1
- 169. 胎児副腎における3βHSD活性に関する研究
- 337 更年期Hot flashの内分泌動態
- 155 妊娠末期, 基礎体温の形と血中プロゲステロン/エストラダイオール比(P/Ed)との関係
- 86. 頸管熟化に伴う子宮内圧・動脈血酸素飽和度と基礎体温・血中ホルモン値との相互関係
- 胎盤性Sulfatase欠損症の一例 : 臨床経過及び検査
- P-97 卵巣明細胞腺癌におけるSteroid sulfatase発現に関する検討
- 多変量解析を用いた切迫流産予後判定
- 88 多変量解析を用いた切迫流産予後判定
- 妊娠初期における母体末梢血, 羊水及び絨毛組織中の各種steroid値の比較
- 339 老年期卵巣におけるステロイド産生酵素の特性
- 515 卵巣におけるステロイド産生酵素の加齢に伴う変化
- 胎盤性Sulfatase欠損症の一例 : 特にX-linked Ichthyosis との関連について
- 356 サイクリンGによるG2/M期の制御
- P-35 サイクリンGの発現が細胞周期におよぼす影響
- 186 絨毛癌化におけるIGF2・H19遺伝子発現調節機構について
- 97 HPV16型E7によるbcl-2の誘導
- P-284 絨毛癌におけるエストロゲンレセプターの発現とその制御機構について
- 415 全胞状奇形, 絨毛癌におけるゲノムインプリンティングとメチル化の関与について
- Human Menopausal Gonadotropin(HMG)による排卵誘発における卵巣ステロイド動態
- 392. HMGの卵巣刺激効果について : 特に卵巣静脈血中性ホルモン値の動態より : 第65群 不妊・避妊 III (389〜394)
- 卵巣周期による卵巣ステロイド代謝像の相違
- 胎盤性Estrogen産生酵素の妊娠時期による変化
- 母体側DHA-S投与における分娩時母児血中および新生児期血中各種ステロイドホルモン値の変動
- 72.胎盤性sulfatase欠損症新生児の日齢による血中ステロイド値の推移 : 第13群 胎児・新生児 III (72〜78)
- 陣痛発来前後の羊水および血中13,14-dihydro-15-keto-prostaglandin F_とdehydroepiandrosterone-sulfate (DHA-S)の動態について
- 71 陣痛発来前後の羊水中13,14-dihydro-15-keto-prostaglandin F_とoxytocinの動態
- 100. 卵膜のSteroid代謝能について : 第21群 内分泌・末梢III
- 212.胎児に於ける5α-reduced steroid の動態 : 第57群胎児・新生児・内分泌II
- ヒト胎盤におけるEstrogen生合成
- 本邦における胎盤性 sulfatase 欠損症
- 108. 白血球中sulfatase活性と血清リポ蛋白電気泳動とによる胎盤性sulfatase欠損症の補助診断
- 316. ヒト分娩発来周辺時期における胎盤性3β-hydroxysteroid dehydrogenase 活性 : 特に胎児副腎源steroidsによる阻害効果について
- 187 胎児及び新生児血中19-hydroxyandrostenedione値の動態
- 268. 胎盤性20α-hydroxysteroid dehydrogenase活性に関する研究 : 第47群 妊娠・分娩・産褥 X
- 27. 本邦における27例の胎盤性sulfatase欠損症 : 第4群 妊娠・分娩・産褥
- 胎児胎盤系における16α-hydroxy-DHAおよび16α-hydroxypregnenoloneの生成とその動態
- 85. 胎盤性sulfatase欠損症における羊膜sulfatase活性について : 第15群 内分泌 III (85〜90)
- ヒト血液中5-androstene-3β, 17β-diolの動態