卵巣周期による卵巣ステロイド代謝像の相違

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正常成熟期婦人の卵巣におけるステロイド代謝動態を明らかにするため,卵胞期と黄体期とに分けて,末梢血,卵巣静脈血,卵巣組織中の各種ステロイド濃度のradioimmunoassay(RIA)法による測定,並びに卵巣組織の3β-hydrgxysteroid dehydrogenase(3β-HSD)活性をin vitroでのΔ^5ステロイドよりΔ^5ステロイドヘの転換率から測定した.測定したステロイドは,pregnenolone(P_5),17α-OH-P_5,dehydroepiandrosterone(DHA),androst-5-ene-3β,17β-diol(AD),progesterone(P_4),17α-OH-P_4,androst-4-ene-3,17-dione(Δ^4A),testosterone(T)の8種である.1)卵巣静脈血中と末梢静脈血中ステロイド値の比較:卵巣静脈血中では,末梢血に比し,卵胞期,黄体期ともに,上記8種ステロイドはいずれも有意に高く,卵巣でこれらが産生されている事が示唆された.2)卵巣静脈血中ステロイド値の卵胞期と黄体期での比較:黄体期卵巣静脈血中のP_5,P_4 17α-OH-P_4,DHA,Δ^4A,Tの各値は卵胞期に比して有意に高値であって,黄体期でのこれらのステロイドの分泌亢進が示唆された.17α-OH-P_5,AD値には黄体期,卵胞期の間に差を認めなかった.3)卵巣組織中ステロイド値:黄体組織中のP_5,17α-OH-P_5,DHA,P_4,17α-OH-P_4,下値は卵胞組織に比し有意に高値であった.4)卵巣組織中ステロイド値と卵巣静脈血中ステロイド値との関係:卵巣組織中ステロイド値は,卵巣静脈血中ステロイド値とは必ずしも平行せず,増減の割合も一致しない.5)3β-HSD活性:i)黄体組織の3β-HSD活性はP_5,17α-OH-P_5,DHA,ADいずれの基質に対しても卵胞組織に比しては著しく高い.ii)卵胞組織中の3β-HSD活性は比較的低いが,基質特異性があり,P_5に対する活性を100%とすると,17α-OH-P_5に対しては171.4%と有意に高く,一方DHAに対しては52.7%と有意に低値であった.以上により,黄体期ではΔ^4系ステロイドの産生の著増が確かめられたが,これにはΔ^5系各ステロイドに対応する3β-HSD活性の顕著な上昇とともに,Δ^5系経路の活発化による本酵素の基質とたるΔ^5系各ステロイド生成能の亢進が大きな役割を果していることが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-06-01

卵巣周期による卵巣ステロイド代謝像の相違

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