カンラン類1染色体添加型ダイコンの種子による継代維持
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概要
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本研究は,ダイコンとカンラン類の属間雑種Raphanobrassica から得た7種類のカンラン類1染色体添加型ダイコン(a〜g型,2n=19)の効率的な継代維持の方法を知る目的で行った.すなわち,(1)a〜g添加型ダイコン(B_1F_1)と聖護院大根の正逆交雑,(2)異なる添加型ダイコン(B_1F_1)間の系統間交雑,(3)同じ添加型ダイコン間の姉妹間交雑および,(4)B_1F_1から得た2n=19のB_2F_1植物へのダイコンの戻交雑を行い,各組合わせにおける2n=19植物の出現率,種子の大きさと2n=19植物の出現率,指標形質の遺伝,細胞遺伝学的特徴および,稔性について調査した.その結果,添加染色体は,いずれの組合わせにおいても次の世代へ一定の割合で伝達されるが,伝達率は異なる添加型ダイコン間の系統間交雑および同じ添加型ダイコン間の姉妹間交雑で高いこと,雌性側からの伝達率が雄性側に比較して高いことおよび,添加染色体の種類によって伝達率がかなり異なることが明らかになった.また,2n=19植物は,小粒種子から多く出現することがわかった.a〜g添加型ダイコンを識別できる指標的形質は,どの組合わせについてもその後代によく継承された.また,組合わせいかんにかかわらず,2n=19植物の後代で形質変異は認められなかった.B_1F_1の2組合わせから得た2n=19植物の減数分裂第1中期の染色体対合は,どの組合わせもほとんど差異が認められず,花粉母細胞の多く(96.9%)は,9 II+1 Iの対合型を示し,その後の染色体行動もかなつ安定していた.したがって,伝達された一価染色体は,いずれも親植物から受け継いだカンラン類の染色体とみなされた.また,これらの添加染色体はダイコン染色体とほとんど対合しないことから,添加染色体では構造的変化が起こりにくく,世代を経ても形質の変異が生じないものと考察した.花粉稔性は平均83.2%と比較的高く,種子稔性は茨あたり平均2.8粒で,ダイコンの3.3粒には及ばないものの,安定的に系統を維持できることがわかった.このような添加型ダイコンをより効率よく継代維持するには,伝達率の高い異なる添加型ダイコン間の系統閻交雑,あるいは同じ添加型ダイコン間の姉妹間交雑によって採種し,あわせて小粒種子を選別することが有効であると考察した.
- 日本育種学会の論文
- 1991-12-01
著者
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