ニンジン(Daucus carota L.)F_1種子採種圃における花粉媒介昆虫による花粉流動に及ぼす風向の影響
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概要
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他殖性植物であるニンジンの採種においては, 花粉媒介昆虫の花傘への来訪が不可欠である.そこで, 本研究では自然受粉条件下のニンジンF_1種子採種圃場内における花粉媒介昆虫による送粉距離を風向や風速との関連で追究し, 交雑品種種子の効果的な採種栽培方法について考察を加えた.材料は, 根色が橙色に対し遺伝的に優性である黄色系個体3株を中央にまとめて植えて花粉親とし, それを中心に東西南北を基本とした放射状の8方位の畝に, 0.5m間隔で橙色系個体を12株ずつ種子親として配置した.橙色系の種子親は1次側枝8花傘に整枝し, 受粉は自然の花粉媒介昆虫によるものとした.開花期間中は東風が最も多く, その平均風速は2.5m/secで, ニンジン花傘を訪れた訪花昆虫はヒラタアブ類が最も多かった.中央の黄色系の花粉親に近い各方位の種子親5株ずつ(花粉親から各2.5mの距離まで)について, 黄色系花粉親と開花が同調した2花傘, 計10花傘から花傘ごとに採種し, 結実種子の次代検定を行った.育成したニンジンを播種後74日目に抜き取り, その根色から中央の黄色系花粉親との自然交雑率を調査した.その結果, 中央に位置する黄色系花粉親から0.5mと隣接する橙色系種子親の示す交雑率は風向きと直角の南・北ではそれぞれ61.4%, 82.8%と高かったのに対し, 東・西ではそれぞれ36.9%, 4.8%と低く, 風下にあたる西が最も低かった.また, 中央から1.5m以上離れた橙色系種子親の交雑率は, いずれの方位でも5〜6%と極めて低かった.以上の結果から, ヒラタアブを主な花粉媒介昆虫とする地域のニンジン採種圃場内における花粉流動は主に風向と直角方向の隣接株間で行われることが明らかとなった.よって, 雄性不稔などを利用したF_1種子の採種圃場において採種量を増加させるためには, 花粉親と種子親の畝幅ばかりではなく, 採種地における花粉媒介昆虫の種類と, それらの風向・風速に対する飛翔行動などに配慮した上で畝の方向を決定する必要があり, ヒラタアブを主な花粉媒介昆虫とする採種地では, 畝を風向と平行に配置することを基本にすべきであると考えられた.
- 日本育種学会の論文
- 2001-06-01
著者
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