九州在来秋型ソバ品種の開花期に関する潜在的遺伝変異
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概要
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ソバにおける秋型品種から夏型品種への生態型分化の過程を明らかにするために,栽培期の日長および温度条件に対する開花特性や種子生産性の集団内変異を調べ,九州在来の秋型品種には開花期に関し潜在的な遺伝変異があることを明らかにした.本実験では,まず九州在来の秋型品種および北海道・東北在来の夏型品種をそれぞれ2品種供試し,各生態型の開花特性および種子生産性など生態的特性を長日・高温の夏栽培と短日・温暖な秋栽培下において調べた.各品種において,集団内の50%の個体の第一花が開花に至るまでの播種後日数(50%開花まで日数)は,夏・秋雨栽培とも夏型品種が秋型品種に較べて短かった.集団内の第一花開花まで日数の変異幅は,夏型品種の夏・秋雨栽培と秋型品種の秋栽培では約2週間であった。しかし,秋型品種を夏栽培すると3週間以上になった.一株稔実粒数は秋栽培では両生態型とも70〜80粒前後であったが,夏栽培の夏型品種では33〜34粒,秋型船種では10〜11粒ととくに少なくなった。さらに,秋型品種については夏・秋雨栽培下において開花期に関し早咲きおよび遅咲き個体を選抜し,次代集団の開花特性および種子生産作11を較べることによって品種集団内の遺伝変異を調べた.選抜効果は夏栽培における選抜が高く,50%開花まで日数は早咲き選抜集団では播種後39.6日,遅咲き選抜集団では44.0日であった.一株稔実粒数は早咲き選抜集団では12.9粒,遅咲き選抜集団では2.6粒,原集団では4.0粒であった.以上の結果に基づき,九州在来の秋型品種は開花期に関し幅広い遺伝変異を保有し,その遺伝変異は長日・高温の夏栽培を行うことによって強く発現し,夏栽培下での早咲き個体の選抜によって早生化し種子生産性も向上することが明らかになった.したがって,九州在来の秋型品種は,長日・高温下において早咲き個体の選抜を繰り返すことによって夏型的特性を持つ集団へ分化することが示唆された.
- 日本育種学会の論文
- 1986-03-01
著者
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