<事例研究>情緒障害学級における『体づくり』の現状と課題 : 全道のアンケート調査をもとにして
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概要
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中枢神経系に視点をあてた感覚-運動面へのアプローチは,従来は,イタール,セガン,モンテッソリー等の,手指の巧緻性などの微細な感覚-運動の確立をめざした大脳皮質への働きかけが中心であった。近年のエアーズの感覚統合理論では,体内・体外刺激の感覚インパルスは脳幹で統合されるため,その下位機能の活性化により脳全体が賦活し,その結果として行動の適正化-心理的諸機能の向上-をもたらす^<1)>とした下位脳への働きかけを提唱し,障害児学級においてもその実践的な応用が試みられてしる。このような,運動技能の向上や,体力の増強ばかりではなく,心理的諸機能の向上が期待できる粗大な感覚-運動指導は,情緒障害学級の教育課程において,前教科的な指導として位置づけられるのではないかと考える。 本研究は,このような感覚-運動的な要素を含むすべての体への発達的なアプローチである『体づくり』の指導について,そのねらい・指導の実情・指導の効果等について,全道の小・中学校の情緒障害学級を対象に,調査を実施し,考察を加えたものである。主な調査結果は次の通りであった。(1)『体づくり』の主な内容は,小学校では粗大運動と感覚-運動指導,中学校では粗大運動と心肺機能の増進である。(2)『体づくり』を日課表において帯状(同一時間帯に週3時間以上設定)している学級は,小・中学校ともに7割以上あった。(3)体育以外では,養護・訓練,生活単元学習,日常生活の指導,作業学習,音楽,学校行事など,教育課程のほぼ全領域にわたって『体づくり』に取り組んで,普通教育の『体づくり』に比較すると,質量ともに主要な指導として位置づけている。(4)『体づくり』の指導が心理的諸機能の発達に効果があるとしたものは,小学校で59.9%,中学校で51.6%と半数を越えている,などであった。
- 北海道教育大学の論文
- 1989-03-11
著者
-
伊藤 則博
北海道教育大学旭川校
-
伊藤 則博
北海道教育大学教育学部旭川校 生涯発達心理学
-
佐藤 靖典
北海道教育大学情緒障害教育教員養成過程
-
細野 邦夫
北海道情緒障害教育研究会
-
細野 邦夫
北海道情緒障害教育研究会会長:札幌市立大通小学校校長
-
佐藤 靖典
北海道教育大学情緒障害教育教員養成過程:浦河町立浦河小学校
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