学習障害児の生活史 : 幼児・児童期を中心に
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概要
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現在,「LD」という用語は未だ定義において曖昧な点が指摘されているが,現実にわが国においても,その存在が初めて認められたことは,LD児への正しい理解を求めていく上で重要な段階である。本研究では,LD児の理解の第一歩として,いわゆるLD児の生活史を整理し,その中から表れた問題や親の願いを通して,早期発見・早期対応,そして教育的対応の在り方について,手がかりを得ることを目的とした。方法としては,子どもと常時一緒にいて育ちをみてきている親を対象に,生の声を聴き取ることが有効と考え,親への面接調査を実施した。主な結果として,(1)現在,LD児の幼児期での早期発見・早期対応が難しい状況にあり,LD児の総合療育システムが望まれていること,(2)教育的対応の在り方については,親が教育機関や担任の対応に安心して任せたり,満足した事例の中に参考となることが含まれていた。その条件として,保育機関では,「強制・管理をしない」「子どもに合せて指導する」「1つできたら次へ進む」「辛抱強く待ってくれる」などである。また学校では,「努力を認めてくれて,クラスでほめてくれる」「手をかけてくれる」「焦らず少しずつ指導してくれる」「特学や養護の先生と連携をとって取り組んでくれる」「学校内でLDの理解を深める努力がなされでいる」などがあげられていた。さらには,LD児への具体的な対応として「1対1,あるいは個別的に指示すると理解できる」ことも出されていた。全体を通して「柔軟性,融通性のある対応の必要性」が見出された。
- 北海道教育大学の論文
- 1992-03-31
著者
-
佐藤 剛
札幌医科大学保健医療学部
-
伊藤 則博
北海道教育大学旭川校
-
佐藤 剛
札幌医科大学 衛短大
-
伊藤 則博
北海道教育大学教育学部旭川校 生涯発達心理学
-
絹川 涼子
北海道教育大学情緒障害教育教員養成課程
-
佐藤 剛
札幌医科大学
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