北海道における自閉児の進路についての実態 : アンケート調査より
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概要
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北海道情緒障害教育研究会では,昭和62年度において自閉児の進路はどのようになっているのか,実態を把握するために調査を実施した。調査の対象ぱ(1)小中学校の情緒障害学級に在学している自閉傾向の子,(2)札幌市の精神薄弱特殊学級に在籍している自閉傾向の子,(3)義務制の精神薄弱養護学校に在学している自閉傾向の子,を対象とした。進路に関してのアンケートを各学校に配布し,教師に記入してもらい回答を分析する方法を採用した。回答は164校より寄せられた。その回答を北海道情緒障害教育研究会の調査研究部が中心となって分析した。その結果,次のようなことが明らかとなった。(1)小学校の情緒障害学級に在籍している自閉児の進路の希望として,多くの親も教師も中学校の情緒障害学級に進学を考えているが,その先の進路はまだ未定としている場合が一番多い。(2)中学の情緒障害学級に在籍している自閉児の進路の希望は約55%が高等養護学校への進学となっていた。(3)札幌市の精神薄弱のための特殊学級に在学している自閉児の小学校卒業後の進路希望は大部分が中学校の精神薄弱特殊学級となっていた。中学生の進路希望は約半数が高等養護学校へと進学することとなっている。(4)精神薄弱の養護学校には,約35%の自閉児が在学しているが,進路の選択については親と教師の意見の一致率は特殊学校の場合よりも著しく高い。これは,進路先はきわめて限定されていることからきていると考えられる。事実中学部を卒業した自閉児の約90%は施設へ入所か通所となり,高等養護学校へ進学できた生徒は約5%にすぎない。また,就職できたとの報告はわずかに一例のみであった。自閉児の進学も就職も一般の健常な子供に比較して選択の道は非常に狭く,また険しい。自閉児の進学や就職について,選択できる道を少しでも豊かにするためには学校教育の面のみではなく多くの面で改善が必要であるといえる。福祉の問題の改善,医療の問題,労働の問題等についても父母との連携をはじめ関係諸機関等と幅広く連携しながら活動を進めていくことが必要といえる。
- 1989-03-11