グルテン・脂質混合系の貯蔵中におけるグルテンの変化について

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(1) 綿実油メチルエステルとグルテンを混合して40°CでRH O%, 83%, 96%に貯蔵すると,脂質の酸化はRH 0%のとき最も速やかに進行した. RH 83%および96%では,貯蔵の初期において脂質の酸化が抑制されることを認めた. (2) このときのグルテンタンパク質の変化を調べた結果, RH O%のときは溶解性,粘度,ゲル濾過図に変化がみられなかったのに対して, RH 96%に貯蔵すると脂質の酸化に伴って褐変が起こり,タンパク質の溶解性を減じ,ゲル濾過図,デンブンゲル電気泳動図の上に変化を生じた. (3) RH 0%貯蔵では遊離のアミノ酸がやや増加する傾向があるのに対し, RH 96%では貯蔵中に遊離のアミノ酸が減少した.総アミノ酸ではRH 96%において,リジンとヒスチジンに明らかな減少がみられたがRH O%では含硫アミノ酸だけに減少が認められた. (4) TCA可溶窒素は貯蔵中に増加を示したが, RH 0%の方がRH 96%より増加が大であった.アマイド窒素もわずかに増加が認められ, RH 96%の方が増加が大であった. (5) 酸化油水抽出液をグルテンと混合すると,グルテン・脂質系のときと同様にリジン,ヒスチジンの減少が起こった.さらに混合物を貯蔵すると,アミノ酸が全般的に減少する傾向がみられた. (6) これらの結果からグルテン・脂質系において,乾燥状態では酸化に伴うタンパク質の変化は,脂質とタンパク質の接触域において起こるのに対し,高湿ではより広いタンパク質相に伝達されることが推論された.この場合,水は脂質相とタンパク質相との物質を交流させる運搬者としての役割を果たすと考えられる.
社団法人日本農芸化学会の論文

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