牛乳カゼインミセルに対するpHの影響
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概要
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(1) 脱脂乳を緩衝液または乳清で100倍に希釈して, pH6.8からpH5.5付近までの各種のpHを与えてその濁度を測定すると, pHの低下とともに濁度が減少し, pH5.7付近で濁度は最低となった.さらにpHを低下させると,ミセルの集合が起こりはじめ,濁度は上昇する. (2) 同様の現象は,脱脂乳そのものでも観察された.ただし脱脂乳の場合は, pH6.3付近まではpHの低下による濁度の上昇が見られ, pH6.3に濁度の極大があらわれた. (3) pHの低下による濁度の減少は,溶媒のイオン強度を高めると促進せられ,カルシウム濃度を高めると抑止された. (4) pH5.8へのpHの低下によって,ミセルの容積が3/4前後に収縮することがペレット容積,粘度,沈降の測定を通じて明らかにされた.なお,このときミセルタンパク質の乳清への溶け出しは認められなかった. (5) 乳清のカルシウム濃度を測定して, pHの低下とともに,ミセルから乳清にカルシウムが移行する状況を観察した. (6) 以上の実験結果に基づき, pHの低下による濁度の低下は,カゼインミセルからのカルシウムの離脱によるものであることを結論した. (7) ミセルの集合により濁度の上昇がおこるpHは,カルシウム濃度に依存し,カルシウム濃度が高くなるほど低下する事実を認めた,このことから,ミセルの集合が起こるためには,これに先立ってカルシウムの離脱によるミセルの構造の破壊が,まず起こらなければならないと考えた.
著者
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