顔面筋の異常運動に対する選択的顔面神経枝ブロック法について
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概要
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顔面筋の異常運動には顔面痙攣, 協同運動など種々のものが含まれるが, その発現機構は全く不明といつてよい. 本疾患では開眼が不能になったり口唇音の発音が不全になったり, 美容的見地のみでなく社会生活上にもいちじるしい障害をうける.<BR>本疾患は原因が不明のまま, 確実な治療法がない. 薬物などの保存的治療は無効と考えてよく, 主に外科的治療にたよっているのが現状である. しかし外科的治療も異常運動を麻痺におきかえるにすぎない. 我々は2年前より異常運動のうち局所的な例について選択的顔面神経枝ブロックをおこない, 多少の経験をつんだので報告する. この方法では神経枝を発見するのに注射針を兼用する針電極を使用し, 誘発筋電図を観察しつつおこなう.<BR>方法<BR>第1段階 1対の表面電極を耳下部にあてて顔面神経本幹を刺激する. 双極針電極を目的とする筋に刺入して誘発筋電図をオツシロスコープで観察する.<BR>第2段階 戟激用針電極として23G皮下注射針の尖端をのこして絶縁被膜をかぶせたもの2本を目的とする筋を支配する神経枝が走行していると想定される部位に刺入する. この2本の針電極を通して電気刺激を与え誘発筋電図を観察する. 何回かの試行ののち最位も刺激域値の小さい場合をさがせば, これが電極が最も神経枝に近いことになる. 我々は長さ3msecの矩形波刺激で5V以下を目標にしている.<BR>第3段階 5%フェノールグリセリン2mlを電極針より注入してブロックを完了する.<BR>本法の利点は非観血的方法で外来でも比較的簡単にできること, 局所的な筋麻痺しかおこさぬので美容的見地からも問題が少いことがあげられる. 故に本法の適応は局所的な筋の異常運動で, 顔面半側にわたる痙攣などは別の方法がよい. 欠点としては何回も針を刺入するので疼痛があること, 他の神経切断術に比し効果が短いことである.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
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新美 成二
東京大学医学部
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小林 武夫
東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科
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広瀬 肇
東京大学医学部音声言語医学研究施設
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船坂 宗太郎
東京大学医学部分院耳鼻咽喉科
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戸塚 元吉
虎の門病院耳鼻咽喉科
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小林 武夫
東京大学医学部
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戸塚 元吉
虎の門病院
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船坂 宗太郎
東京大学医学部付'属病院分院耳鼻咽喉科
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広瀬 肇
東京大学医学部耳鼻咽喉科
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