キバガ上科小蛾の一属スゴモリキバガ属の日本からの新種(鱗翅目,ホソキバガ科(新称),ホソキバガ亜科(新称))
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概要
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ヤブミョウガを幼虫期の食草とする美麗なキバガ上科小蛾の一種が中部日本に産することはかなり以前から知られていた.例えば著者の一人である有田は1960年代末期に京都府の鞍馬山で本種の幼虫を採集し,飼育して成虫を得ている.しかし,形態的特徴が従来日本から知られていたキバガ上科高次分類群のいずれにも合致しなかったため,本種は科の所属すら不明のまま今日まで放置されてきた.有田は1999年夏に皇居吹上御苑で本種の幼虫を採集し,それらを飼育して得られた成虫標本は大阪府立大学の上田達也博士を経由して著者の一人である杉島に転送された.標本を検討した後,杉島は本種がスゴモリキバガ属(新称),Idioglossaの未記載種であると判断した.著者両名は本種の生活史を協同で詳細に観察した.この論文では,杉島が本種をヤブミョウガスゴモリキバガ(新称),Idioglossa polliacola sp.nov.と命名し,その成虫形態を記載した.また,両著者は本種の生活史を詳細に記載した.本種の生活史において最も印象的な特徴は幼虫がヤブミョウガの葉に作る独特かつ複雑な巣であり,その構造の適応的な意義に関する所見を記した.スゴモリキバガ属は金属光沢のある横帯を持つ細長い後翅,♂触角基部付近下面の亜円錐形突起,そして何よりも口吻基部付近より生じる極端に伸張した鱗片束によって特徴づけられる.本属は従来ニセマイコガ類として扱われてきたが,最新の分類体系に従えばこれまで日本に産しないとされていたホソキバガ科,Batrachedridaeのホソキバガ亜科,Batrachedrinaeに置くのが最も適切なようである.なお,ヤブミョウガスゴモリキバガ,スゴモリキバガ属,ホソキバガ亜科,ホソキバガ科は全て新称である.Idioglossa polliacola Sugisima,sp.nov.ヤブミョウガスゴモリキバガ(Figs 1-25)本種の前後翅はともに光沢のある山吹色で金属光沢のある灰色の模様に彩られる.前翅の模様は翅の長軸上を基部から1/5まで走る縞,1/3付近にある「く」の字型のやや暗色な横帯と3/4強を斜めに横切るやや暗色な帯,そしてこれら2本の帯の中央にある紋であり,後翅の模様は1/4,2/5,3/5,4/5付近を横切る帯で,第4番目が最も太い.後翅の基部と第1番目の横帯の間,及び第2と3番目の横帯の間は淡色になる.躯は光沢のある淡黄色である.♂交尾器においては,把握器基部背面より生じる湾曲した鎌刃状の突起が特徴的であり,この突起の先端は把握器腹面の縁にまで至る.
- 日本鱗翅学会の論文
- 2000-09-30
著者
-
杉島 一広
Laboratory of Systematic Entomology, Faculty of Agriculture, Hokkaido University
-
有田 豊
Zoological Laboratory, Faculty of Agriculture, Meijo University
-
有田 豊
Zoological Laboratories Faculty Of Agriculture Meijo University
-
有田 豊
Zoological Laboratory Faculty Of Agriculture Meijo University
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