フィリピンのスカシバガ(鱗翅目,スカシバガ科)の稀種と新種
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概要
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フィリピンのスカシバガはDiakonoff(1968)によりまとめられたが,種の多様性と多くの固有種を有する膨大な島々からわずかに17種類が記録されたに過ぎない.第一著者はC.G.Treadaway氏(リンバッハ・ドイツ)から彼の数度に渡る蝶蛾の遠征調査から得られたスカシバガの標本と1997年にW.MeyとW.Speidel両博士(二人ともフンボルト大学博物館)がこの地域でスカシバガの合成フェロモンで得た標本を入手した.これらの標本をもとにイギリス,デンマーク,フランス,ドイツ,オーストリア,日本,アメリカなどの博物館や大学に所蔵されているフィリピンのスカシバガの標本の研究を行った.その結果7つの新タクサ,2種の属の変更,1種の新記録,6種の新しいデータの記録を行った.1.Cyanosesia treadawayi sp.nov.(Figs 1,2,19,28)雌雄で色彩斑紋がかなり異なる.レイテ島産.2.Cyanosesia pelocroca(Diakonoff),comb.nov.Glossospheda属のもとに記載されたが,Diakonoff(1968)の図からCyanosesia属なのは明かなので所属を変更した.3.Cyanosesia meyi sp.nov.(Figs 3,20)前後翅ともに透明な種類でサマール島から採集された.4.Cyanosesia philippina Gorbunov&Kallies(Fig.4)前種に良く似ているが,前翅の横脈紋や腹部の色彩などで区別される.ミンダナオ島から記録された.5.Trilochana triscoliopsis Rothschild(Fig.5)この巨大なスカシバガは4月中旬にレイテ島のダナオの標高650mのところで,スカシバガの合成性フェロモンで午前の遅くに2雄が採集された.しかしその合成性フェロモンは特定されていない.6.Trilochana illustris sp.nov.(Figs 6,21)Trilochana属のほかの種類とは,前後翅が半透明の茶褐色であることで容易に区別される.はかのこの属の種類の前後翅は黒みがかったブルーかグリーンである.ミンダナオ島で4月に得られた.7.Melittia ferroptera sp.nov.(Figs 7,8,9,22,29)このモモブトスカシバはミャンマーから記録されたM.tabanusに良く似ているが前翅の横脈紋,後脚脛節の色彩などで区別される.レイテ島,ミンダナオ島,ヤブ島,ルソン島などから採集された.8.Melittia callosoma Hampson(Figs 11,12,23,30)北ボルネオから記載されたM.eurytion(Westwood,1848)に良く似た種類であるが今回フィリピンのミンダナオ島,ネグロス島,ミンドロ島,ルソン島およびインドネシアのスラウェシ島からも新しく記録した.9.Melittia javana Le Cerfこの種はすでにフィリピンのネグロス島から記録があるが,さらに今回ミンダナオ島とシキホル島から記録した.10.Melittia gorochovi Gorbunov(Fig.10)この種はベトナム,タイ,北インド(シッキム)などから記録がある.今回新たに中国(雲南),ラオス,ミャンマー,フィリピン(ルソン島)などから記録した.Scoliokona gen.nov.(Figs 13,14,15,24,25,26,31)Type species:Sura tetrapora Diakonoff種tetraporaはアフリカの属Sura Walkerのもとに記載されたが,東洋熱帯のこの種群は翅脈,口吻などが異なるので,別属を設けた.本属はNokona Matsumura,1931,Adixoa Hampson,1893,Pramila Moore,1879などに近い属である.11.Scoliokona tetrapora(Diakonoff)(Figs 13,14,24,25,31)後翅の透明部分の形や数,尾端総毛の色彩に種の特長が現われる.ルソン島とミンダナオ島から知られている.12.Scoliokona heptapora sp.nov.(Figs 15,26)この新種は前種に比べて後翅の透明部分大きく,7室になっている.レイテ島とサマール島から記録された.13.Sura cyanolampra Diakonoff(Fig.16)Sura属のもとに記載されたが,その所属を検討すべきであるが雌の標本が得られているのみで雄は未知であるのでSura属のままにしておいた.ルソン島から知られている.14.Nokona heterodesma(Diakonoff),comb.nov.(Fig.17)Diakonoff(1968)によってParanthrene属で記載されたが,ゲニタリアなどは明かにNokona属の特微を示しているので所属を変えた.ルソン島とネグロス島から記録されている.15.Nokona palawana sp.nov.(Figs 18,27)パラワン島から得られたホロタイプ標本1頭のみが知られている.ゲニタリアはこの属の特微をよく示している.
- 1998-10-05
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