日本産Melittia属(鱗翅目,スカシバガ科)の幼虫と蛹
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本産Melittia属3種,M.nipponica ARITA and YATAオオモモブトスカシバM.inouei ARITA and YATAシタキモモブトスカシバ(新称),M.Japonica HAMPSONモモブトスカシバの幼虫と蛹および断片的な生態を記載した.M.nipponicaの幼虫と蛹は堀(1934)がすでにM.bombyliformis CRAMERの名前で図示しているが詳しい記載はしていない.M.nipponicaとM.inoueiの生態は良く似ている.両種ともキカラスウリやカラスウリに虫〓を作るがカラスウリからは稀にしか見つからない.虫〓は1個に1匹入っていることが多いがまれに10数匹の幼虫が入り,大きい虫〓になることがある(Figs.1-3).秋に土中で土繭を作り,終齢幼虫で越冬した後に蛹化する.幼虫と蛹の形態もよく似ているが,幼虫では,labrumとmandibleの形態で区別できる.土繭(Fig.4)は明らかにM.inoueiの方が小さい.蛹はfrontal processの形が異なり,また腹部末端節の尾突起の数はM.nipponicaは7対,M.inoueiでは6対である.M.japonaは前記2種と同様に,食草はウリ科植物のアマチャヅルで,その茎に虫〓を作る.中〓は地表50cmから地下部5cm位までの茎に作られるが,地表近くの根際に多い.虫〓は茎が膨らんでできた物ではなく,片側半分が茎で反対側の半分は糸で木屑を密に綴ったものである(Figs.5-7).虫〓の中で終齢幼虫状態で越冬し,おそらく6月頃に繭を作らずに蛹化する.M.iaponaの幼虫には1本の太短い突起をそなえた肛上板がある.蛹は,前2種と異なり細長く,frontal processは良く尖っている.尾突起の数は5対である.上記3種の幼虫の第8腹節SD2とD2および第9腹節のD2の剌毛は鱗片状になっている.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1990-03-20
著者
-
有田 豊
Zoological Laboratory, Faculty of Agriculture, Meijo University
-
有田 豊
Zoological Laboratories Faculty Of Agriculture Meijo University
-
有田 豊
Zoological Laboratory Faculty Of Agriculture Meijo University
-
井上 雄作
Zoological Laboratory, Faculty of Agriculture, Meijo University
-
井上 雄作
Zoological Laboratory Faculty Of Agriculture Meijo University
-
矢田 直樹
名城大学農学部動物学研究室:(現)環境科学株式会社
関連論文
- タイのモモブトスカシバ属(鱗翅目,スカシバガ科)の新種と未記録種
- 北海道からのフサスグリの外来種スカシバガ(スカシバガ科)の発見
- 琉球列島沖縄島で採集されたスカシバガ科の2新種
- 中国からPhycodinae亜科(鱗翅目,ヒロハマキモドキガ科)の新種
- 半島マレーシアにおけるスカシバガSynanthedon nauticaによるNeobalanocarpus heimi(フタバガキ科)の種子食害
- ベトナムと台湾のハチの様に腰の細いスカシバガの新種
- 幼虫がサカキに潜る日本産Antispila属の1新種(鱗翅目,ツヤコガ科)
- Dasysphecia属(鱗翅目,スカシバガ,Cissuvorini)の分類学的位置および北ベトナム産のマルハナバチに擬態する2新種
- 韓国のリンゴを加害するSynanthedon haitangvora Yang(鱗翅類,スカシバガ科)の成虫と幼虫の分類学的な研究
- 東洋区のSnanthedonini族(鱗翅目,スカシバガ科)の1新属2新種について
- スラウェシ島産Trilochana属(鱗翅目,スカシバガ科)の1新種
- ボルネオ島サバ州のマリアウベースンのスカシバガ(鱗翅目,スカシバガ科)の知見
- ベトナム産のハチの様に腰の細いスカシバガ(スカシバガ科,Similipepsini)の2新種
- 台湾産Trichocerota Hampson(鱗翅目,スカシバガ科)の一新種
- ベトナム産Aschistophleps属(鱗翅目,スカシバガ科)の一新種
- 中国雲南のRavitria属(鱗翅目,スカシバガ科)の1新種について
- ベトナムのヒメスカシバガ亜科(鱗翅目,スカシバガ科)
- 北ベトナム産Melittia属(鱗翅目,スカシバガ科)の1新種および1未記録種
- キバガ上科小蛾の一属スゴモリキバガ属の日本からの新種(鱗翅目,ホソキバガ科(新称),ホソキバガ亜科(新称))
- 中国産Paranthrenopsis属(鱗翅目,スカシバガ科)の1新種
- ベトナムおよびその近隣地域のChamanthedon属(鱗翅目,スカシバガ科)の知見
- ベトナム産Osminiini族(鱗翅目,スカシバガ科)の新知見
- インド産モモブトスカシバ属(鱗翅目,スカシバガ科)の3新種
- フタスジコスカシバSynanthedon pseudoscoliaeforme Spatenka and Arita,1992(鱗翅目,スカシバガ科)の新資料
- コシアカスカシバ(鱗翅目,スカシバガ科)の羽化場所と羽化時の気象要因
- 日本においてユーカリ類を加害する鱗翅類
- B213 日本においてユーカリ類を加害する鱗翅類(生活史 分布)
- 訃報 森内茂博士
- 皇居の蛾類モニタリング調査(2000-2005)
- 日本産ホソハマキモドキ属(鱗翅目,ホソハマキモドキガ科)の一新種
- 常盤松御用邸の蛾類
- 赤坂御用地の鱗翅類
- 韓国のスカシバガ科
- 自然教育園の蛾類
- 皇居の蛾類
- コスカシバ(鱗翅目,スカシバガ科)雄成虫の性誘引物質への反応とその誘起条件について
- 日本におけるキオビコスカシバ(鱗翅目,スカシバガ科)の食草の発見
- ヒメコスカシバSynanthedon tenue(Butler)(鱗翅目,スカシバガ科)の日本からの4新食樹の記録
- 奄美大島におけるスカシバガ3種の訪花記録(鱗翅目,スカシバガ科)
- 日本のスカシバガ科
- ハグルマヤママユ(ヤママユガ科)の幼生期
- オオモモブトスカシバの土中の営繭場所と羽化時の蛹の移動
- ヒトスジスカシバ(スカシバガ科)の幼虫と蛹の記載
- 日本産Melittia属(鱗翅目,スカシバガ科)の幼虫と蛹
- Melittia formosana MATSUMURAの奄美大島からの発見
- スカシバガとハチ擬態 (特集 擬態の生態学)
- チベット・ラサの街路樹のポプラを加害するSesia属の1新種(鱗翅目,スカシバガ科)
- フィリピンのスカシバガ(鱗翅目,スカシバガ科)の稀種と新種
- ボルネオ島サバ州のマリアウベースンのスカシバガ(鱗翅目,スカシバガ科)の知見
- Sesia molybdoceps(HAMPSON)の日本からの新しい食草の記録
- 極東ロシアの属Scalarignathia Capuse, 1973の再検討(鱗翅目,スカシバガ科)
- Synanthedon tenue(Butler)ヒメコスカシバ(鱗翅目,スカシバガ科)の新食草
- ベトナム産スカシバガ(鱗翅目,スカシバガ科)の新種とあまり知られていない種
- Sesia rhynchioides (BUTLER)の雄の記載(鱗翅目:スカシバガ科)
- 国立パリ自然史博物館に保存されているFerdinand Le Cerfのスカシバガ(鱗翅目,スカシバガ科)のタイプ標本の再検討 : III.東洋区の属Chamanthedon Le Cerf,1916
- 九州より見いだされたモモブトスカシバ属の新種(鱗翅目,スカシバガ科)
- アカスカシバNokona rubra Arita and Tosevski,1992(鱗翅目,スカシバガ科)の食草と幼虫生態の記録
- タイワンモモブトスカシバMelittia formosana Matsumura,1911(鱗翅目,スカシバガ科)の食草の発見
- 英国オックスフォード大学のホープ昆虫コレクションに保存されているMelittia属(鱗翅目,スカシバガ科)のタイプ標本の再検討
- 東洋区のMacrotarsipus属(鱗翅目,スカシバガ科)の再検討
- 東洋区のOsminiini族の新属新種(鱗翅目,スカシバガ科)
- 東部旧北区のスカシバガの新種(鱗翅目,スカシバガ科)
- 半島マレーシアにおけるスカシバガ Synanthedon nautica による Neobalanocarpus heimii (フタバガキ科)の種子食害