7.うま味の神経科学的研究 : 過去から未来へ(<特集>うま味発見100周年記念公開シンポジウム-7)
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概要
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足立明先生は河村洋二郎先生との共同研究で、うま味に関する神経生理学の研究を行った世界のパイオニアである。ネコの鼓索神経の単一神経活動の記録と分析を行い、グルタミン酸ナトリウムにのみ応じる単一神経が存在することを1962年に報告し、その後数年にわたって報告された論文では、神経応答としてうま味の相乗効果が認められるなど、先駆的な知見を報告している。一方、時を同じくして、熊本大学の佐藤昌康先生のグループからは、ラットを用いて、うま味物質の神経応答に関する報告が出され、うま味研究に関するホットな競争が繰り広げられた。佐藤研からは、ショ糖など甘味刺激によく応じる線維において相乗効果は明確に認められるが、うま味に特異的に応じる線維の存在は報告されなかった。その後、ハムスター、マウス、イヌなどで神経応答の研究が進められた。今後の展望として、味細胞膜におけるうま味受容体に関する分子生物学的研究の進展は著しいものがあり、遠からずうま味の受容機構の本態、相乗効果のしくみなども、解明されるものと思われる。また、別の展開として、消化管にも存在するうま味受容体の食機能における役割の解明は、うま味研究の次のステップとして重要である。池田菊苗のうま味の発見は、昆布を含む伝統的な日本食という食文化に基づくものであった。同じく日本の食では、「こく」(kokumi)という表現がある。こくの定義を明確にした上で、うま味に次ぐ日本発のオリジナルな研究としてその本態を科学的に解明すべきである。
著者
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