シロクローバの開花・結実習性 : 4.胚珠稔実率の個体間変異と種子形成過程における種々の発生学的異常との関係
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概要
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放棄された畑地に自生していたシロクローバ集団から30個体を選び,胚珠稔実率を調査したところ,著しい個体間変異を認めた。そこで上位5個体(高稔性群)と下位5個体(低稔性群)を選び,両稔性群に差異を生じせしめた種子形成過程における発生学的異常(異常胚のう形成,不受精,胚崩壊)の相対的重要性を検討した。そのためにそれぞれの個体から授粉3日後に子房を採取,パラフィン切片とし,組織形態学的な観察を行った。その結果,差異を生じせしめた要因としては,胚崩壊が最も重要であり(14.6%),ついで異常胚のう形成(14.1%),不受精(7.0)が重要であることがわかった。しかし,個体間の比較では,個体によって特定な異常が多く発生するといった関係は認められず,低稔性群の個体ではどの発生学的異常も一様に多く生ずる傾向があった。また,両稔性群間における胚および胚乳の発育程度を,それぞれ細胞数および遊離核の数で比較したところ,低稔性群の発育は高稔生群に比べて遅延していた。これらの結果から,両稔生群間に胚珠稔実率の差異を生じせしめた真の原因は,個々の発生学的異常の発現を決定する主働遺伝子的要因の効果でなく,種子形成過程の全般にわたって,その内的生理環境を規定する母植物の遺伝子型的効果であることが認められた。
- 帯広畜産大学の論文
- 1983-06-25
著者
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