中国および日本産水稲品種の食味に関する研究 : 香川県と中国天津市産米の比較
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概要
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中国華北地方における良食味品種の育成と良食味米生産技術の開発に資する知見を得るために,日本品種4と天津市近辺における主要品種6を香川大学農学部と天津市水稲研究所で栽培し,食味特性の品種間差および産地間差を検討した.得られた結果の概要は次のとおりである.1.両産地米とも,アミロース含有率は,日本品種コシヒカリ,キヌヒカリ,中国品種早花2,花育13,津稲779等で低く,日本品種コガネマサリ,中国品種中作23,中作93等で高かった.最高粘度は,コシヒカリ,キヌヒカリで高かったが,中国品種の中では津稲779が最も高い値を示した.タンパク質含有率の品種間差は概して小さかった.香川産米のアミロース含有率とタンパク質含有率はともに天津産米よりも有意に低かったが,最高粘度とブレークダウンの産地間差は有意ではなかった.アミロース含有率および最高粘度には,有意な正の産地間相関が認められた.2.香川産コガネマサリを基準とした官能検査における香川産米の総合評価は,コシヒカリが最も高かった.中国品種では,花育13と津稲779は基準以上であったが,他の品種の評価は低かった.天津産米の総合評価は,いずれの品種も基準に及ばなかったが,総合評価の産地間相関は有意であった.すなわち,香川産米で総合評価の高い品種は,天津で栽培された場合にも高い評価を受けることが知られた.3.総合評価はアミロース含有率と有意な負の相関を示したが,タンパク質含有率との間に有意な相関関係は認められなかった.しかし,アミロース含有率とタンパク質含有率を説明変数,総合評価を目的変数とする重回帰分析を行ったところ,これら2特性によって総合評価の約70%が説明できることが判った.また,それぞれの総合評価に対する貢献度は約2:1と推測された.4.以上より,中国の天津市地方における良食味米生産のためには,栽培と育種の両面において,アミロース含有率を下げることが最も重要と考えられた.ただし,花育13および津稲779の官能検査における評価は日本のコガネマサリ〜おくひかり並の水準にあると判断され,理化学的特性の水準も高かった.従って,これらの品種は今後の中国華北地域における良食味品種育成にとっての有力な育種母材になると期待される.
- 日本作物学会の論文
- 1999-12-25
著者
-
丹野 久
北海道立中央農業試験場岩見沢試験地
-
豊田 正範
香川大学農学部
-
楠谷 彰人
香川大学農学部
-
浅沼 興一郎
香川大学農学部
-
山村 新
香川大学農学部
-
崔 晶
香川大学農学部
-
丹野 久
北海道立上川農業試験場
-
諸隈 正裕
香川大学農学部附属農場
-
趙 居生
天津市水稲研究所
-
崔 晶
天津農学院
-
陳 秀琴
天津市水稲研究所
-
諸隅 正裕
香川大学農学部
-
趙 居生
中国天津市水稲研究所
-
李 艶萍
中国天津市水稲研究所
-
陳 秀琴
中国天津市水稲研究所
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