中国および日本産水稲品種の食味に関する研究 : タンパク質含有率の品種間差に関わる諸要因
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概要
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日本品種4,中国品種5を供試し,白米のタンパク質含有率に品種間差が生じる機構を明らかにしようと試みた.1.白米のタンパク質含有率(P%)は,日本品種青い空の7.31%が最低,中国品種早花1の9.08%が最高であった.概して,日本品種の方が中国品種よりも低い傾向がみられたが,日本品種コガネマサリの値は8.32%で高く,中国品種津稲779の値は7.75%であり,日本品種並に低かった.2.P%は,その構成要因である1粒タンパク質含量(PW/GN)とは強い正の相関を示したが,もう一方の粒重(GW)との間には負の相関傾向がみられたものの,相関係数は有意ではなかった.しかし,PW/GNに関わる諸要因の影響を取り除いて求めたGWとP%との偏相関係数は,ほとんどの場合,単相関係数よりも高くなった.PW/GNは,出穂期後の1籾窒素転流量(NTW/GN)と有意な正の相関を示した.3.NTW/GNは,出穂期における1籾窒素含量(NW_1/GN)とその転流率(NTR)によって構成されるが,NW_1/GNおよびNTRとNTW/GNとの間には,ともに有意な正の相関関係が存在した.NW_1/GNはさらに,出穂期の茎葉乾物重/籾数比(W_1/GN)と茎葉窒素含有率(N_1%)に分割されるが,NW_1/GNはN_1%とのみ有意な正の相関を示した.W_1/GNとは負の相関傾向にあったが,相関係数に有意性は認められなかった.4.出穂期迄日数はW_1/GNと正,N_1%と負の有意な相関を示したが,他の要因との間に有意な相関関係はみられなかった.N_1%は出穂期迄日数との回帰式から推定した窒素吸収力(NA)とも有意な正の相関を示し,N_1%には品種の早晩性とNAが同程度の強さで関与していると推測された.5.以上より,窒素の動態からみた場合,本試験に供試した品種のP%は,NA弱→N_1%低→NW_1/GN少→NTW/GN少→PW/GN少→P%低,という経路によって決定されたと判断される.また,W_1/GNも炭水化物の生産・転流系を通じてP%に関与していることが示唆された.さらに,粒大もP%に影響し,窒素の転流系に関わる要因に大差がなければ,GWの重い品種ほどP%は低くなる傾向がみられた.
- 日本作物学会の論文
- 2001-12-25
著者
-
諸隈 正裕
香川大学農学部
-
諸隈 正裕
香川大学
-
豊田 正範
香川大学農学部
-
楠谷 彰人
香川大学農学部
-
浅沼 興一郎
香川大学
-
楠谷 彰人
香川大学 農学部
-
劉 建
愛媛大学大学院連合農学研究科
-
諸隈 正裕
香川大学農学部附属農場
-
趙 居生
天津市水稲研究所
-
劉 建
天津市水稲研究所
-
崔 晶
天津農学院
-
陳 秀琴
天津市水稲研究所
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