人工気象室を用いた水稲開花期耐冷性の簡易検定法の開発
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
水稲における開花期耐冷性の検定は, 人工気象室などの施設と多くの労力を必要とするため, 実施例が極めて少ない.そこで, 簡易に多数の品種を扱え, 開花期耐冷性育種に利用可能な検定法を考案した.検定材料は, 館15×横5×高さ10cmの軽量な, 方形ポットに, 縦一列に主稈のみからなる8個体の密植直播栽培で養成した.処理は50%遮光幕付人工気象室を用い, 当日出穂の穂が最も多い日の午後5時から17.5℃15日間処理を行い, 処理開始日に出穂した穂の稔実歩合により開花期耐冷性を検定した.±0.8ランクの誤差を許容し, 極弱から極強まで7ランクに判定するために必要な最少の穂数は10, 供試ポット数は3〜4である.最低の稔実歩合となる処理開始日が, 15℃8日間処理では品種により異なる(出穂後0〜3日)のに対し, 17.5℃15日間処理では各品種ともほぼ出穂日(同0日)であることから, 本法では検定に必要な最低稔実歩合を得るための調査穂数が少なく, 省力的である.本法による検定結果は年次間で高い正の相関が認められ(r=0.808^<**>, n=14), また, 15℃8日間処理や過去に報告された12℃6日間処理による検定結果とも有意な正の相関が得られた(それぞれ, r=0.750^<**>, 0.802^<**>, いずれもn=14).さらに本法の養成個体は圃場に栽培した稲体に比べ小さく一穂籾数が45〜50%減少するが, 圃場に栽培した稲に近い一穂籾数の材料(1 / 5000aワグネルポット, 2株, 各株2本植)を検定した結果とも高い正の相関が認められ(r=0.922^<**>, n=8), 有効な検定法と考えられた.
- 日本作物学会の論文
- 2000-03-05
著者
-
丹野 久
北海道立中央農業試験場岩見沢試験地
-
丹野 久
北海道立上川農業試験場
-
木内 均
北海道立上川農業試験場
-
平山 裕治
北海道立上川農業試験場
-
菊地 治己
北海道立上川農業試験場
-
菊池 治己
上川農試
関連論文
- 寒地における水稲もち米品質の年次間と地域間の差異およびその発生要因(品質・加工)
- 人工気象室における幼穂形成期から開花期の低温が北海道水稲品種の稔実歩合に及ぼす影響
- 栽培 北海道産うるち米の精米蛋白質含有率とアミロース含有率における年次間および地域間差異と生育特性との関係
- 短日処理による到穂日数の短縮が水稲の開花期耐冷性に及ぼす影響について
- 東北以南の日本水稲品種における開花期耐冷性評価と穂ばらみ期耐冷性との関係 : 地域的特徴を中心として (品種・遺伝資源)
- 北海道水稲品種における開花期耐冷性の評価およびその穂ばらみ期耐冷性との関係について
- 水稲新品種「ほしたろう」の育成
- 人工気象室を用いた水稲開花期耐冷性の簡易検定法の開発
- 寒地水稲の湛水土中直播栽培における簡易有効積算気温による品種選定
- 寒地水稲の湛水土中直播栽培における収量および食味関連形質の特性
- イネ品種「しおかり」より生じた長粒突然変異の特性と遺伝子同定 : 稲の交雑に関する研究 第ⅩCⅨ報
- 栽培 イネの穂ばらみ期冷温による不稔発生条件下における隔離距離と交雑率との関係
- 水稲新品種「ななつぼし」の育成
- 酒造好適米新品種「吟風」の育成
- 良食味、耐冷の水稲新品種候補系統「空育163号」
- 酒造用水稲新品種「吟風(空育158号)」
- 中国雲南省におけるイネ収量の遺伝子型と環境との交互作用の解析
- 中国雲南省イネ遺伝資源における胚乳アミロース含有率変異の解析および突然変異による低アミロース系統の作出
- 簡易有効積算気温を利用した成苗ポット育苗における育苗日数の適正化
- 寒地における水稲の湛水土中直播栽培の播種様式が収量に及ぼす影響
- インゲンマメ未熟子葉からの不定芽形成に及ぼす植物ホルモンおよびゲル化剤の影響
- 北海道水稲品種の開花期耐冷性評価 : 年次変動と基準品種の選定
- 北海道新旧水稲品種の開花期耐冷性について
- 水稲の開花期耐冷性検定法の確立
- 水稲の湛水直播栽培における「シーダーテープ」の評価
- 水稲品種「はやまさり」と「Italica Livorno」から由来するBC_1F_5系統群を用いた農業形質に関するQTL解析
- 水稲品種「はやまさり」と「Italica Livorno」から由来するBC_1F_5系統群を用いたRFLP連鎖地図の作成とその充実化
- 水稲新品種「空育139号」の培養変異について
- 中国雲南省の日中共同研究における水稲育種,耐冷性,いもち病研究(その3)
- 中国雲南省の日中共同研究における水稲育種,耐冷性,いもち病研究(その1)
- 中国雲南省の日中共同研究における水稲育種,耐冷性,いもち病研究(その2)
- 中国天津産水稲の食味に関する研究 : 品種間差異
- 中国および日本産水稲品種の食味に関する研究 : 香川県と中国天津市産米の比較
- 中国および日本産水稲品種の食味に関する研究 : 同一栽培条件下での比較
- 中国雲南省における水稲耐冷性品種の特性について
- 水稲糯品種「風の子もち」の育成について
- 水稲新品種「彩」の育成について
- 水稲新品種「ハヤカゼ」の育成について
- 中国雲南省における耐冷性品種・系統の特性について
- 葯培養による低アミロース良食味水稲新品種「彩」の育成
- 低アミロース突然変異遺伝子をとりこんだ稲育成系統の理化学的食味特性
- 北海道地域の研究成果情報(平成12年度)から 良食味、耐冷の水稲新品種「ななつぼし(空育163号)」
- 水稲における開花期耐冷性の簡易検定法の確立と遺伝資源の評価
- 組織培養によるアズキ落葉病トキシン耐性カルスの選抜
- 小豆の組織培養由来再分化個体の農業形質
- 水稲米粉におけるアミログラム特性とアミラーゼ活性の関係
- 1999年異常高温年における北海道水稲品種の食味特性について
- セイヨウワサビ(Armoracia rusticana)のプロトプラスト培養
- RFLP解析による北海道水稲品種とイタリア品種Italica Livorno間に見られたゲノミックDNAの多型
- 3種のイネ半矮性遺伝子型系統における収量形質の地域変動
- 水稲の低温苗立性に関する検定法の開発
- 北海道のマーカー育種戦略
- 寒地における水稲もち米品質の年次間と地域間の差異およびその発生要因
- 水稲新品種「彗星」の育成