牛アポリポタンパク質C-IIIの周産期および乳熱での濃度変化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アポリポタンパク質C-III(apoC-III)は低分子量のアポタンパク質で,牛では主に高密度リポタンパク質に分布する.血中apoC-III濃度は周産期疾病である脂肪肝,ケトージス,第四胃変位,胎盤停滞,乳熱で減少するが,乳熱での減少幅が特に大きい.乳熱の診断に利用する目的で,周産期でのapoC-III濃度の変化を調べた.17頭の乳牛について,出産前48日から出産後12日まで,約10日間隔で血清を採取しapoC-III濃度を測定した.17頭中14頭は見かけ上健康で,観察期間中明確な臨床症状を示さなかったが,3頭は出産前後に乳熱を発症した.14頭の健康牛の中で,5頭ではapoC-III濃度は増加したが,9頭では逆に減少した.乳熱牛のapoC-III濃度は,9頭の健康牛に比べ,より顕著に減少した.乳熱ではlecithin:cholesterol acyltransferase(LCAT)活性とapoB-100濃度が低下することが知られている.LCAT活性とapoC-III濃度は乳熱牛では相関したが,apoC-III濃度が増加する5頭およびapoC-III濃度が減少する9頭の健康牛では,共に相関は見られなかった.ApoB-100濃度とは,5頭の健康牛では負の相関を示すのに対し,9頭の健康牛および乳熱牛では正に相関した.LCAT,apoB-100に加え,周産期でのapoC-III濃度の測定は乳熱の診断に有用であることが示唆された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 2001-06-25
著者
-
加藤 憲夫
(独)農業技術研究機構動物衛生研究所北海道支所
-
中川(植田) 寿美
石川県北部家保
-
加藤 憲夫
農林水産省家畜衛生試験場北海道支場
-
加藤 憲夫
(独)動物衛生研究所
-
加藤 憲夫
農林水産省家畜衝生試験場北海道支場
-
Nakagawa-ueta Hisami
The Ishikawa Hokubu Livestock Hygiene Service Center
関連論文
- エチオニン投与によって誘導された脂肪肝牛における血清ApoC・III濃度の減少(内科学)
- 牛分離肝実質細胞のプロティンキナーゼC及びその内在性基質
- スフィンゴシンは乳牛乳腺の核内プロティンキナーゼCによる基質タンパク質リン酸化を調整する(生化学)
- 乳牛乳腺のプロティンキナーゼC(PKC)基質である21kDaタンパク質リン酸化は,スルファチドで阻害されるが,その阻害はホスファチジジルセリンにより回復される(生化学)
- プロティンキナーゼCによる牛乳房アネキシンIのリン酸化はメリチンによって阻害される(生化学)
- 乳牛の脂肪肝および脂肪肝関連疾病とアポリポタンパク質
- 脂肪肝, ケトージス, 第四胃変位, 乳熱, 胎盤停滞の乳牛では血清アポリポタンパク質C-III濃度が減少していた
- パスツレラ・ヘモリティカおよびBHV-1を投与して作成した仔牛では高密度リポタンパク質中のアポリポタンパク質C-III濃度が減少していた
- 牛のリポタンパク質画分には14キロダルトン血清アミロイドAに免疫学的に関連した2種類の低分子量タンパク質が存在し, これら2種類のタンパク質の血清濃度は実験的肺炎で減少する
- SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で示された正常乳と乳房炎乳の異なるタンパク質パターン