阿蘇地域の半自然草地における火入れ中止にともなう植生の変化
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概要
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阿蘇地域の半自然草地において,火入れが中止された草地の植生を火入れ継続草地と比較した。調査地は,阿蘇地域の5つのススキ型草地,すなわち火入れ継続,火入れ中止後1年,6年,8年および約30年経過した草地である。5地域とも植被率はほぼ100%であり,群落高は110-178cmであった。出現極数は火入れ継続草地で高く,火入れ中止草地では低かった。立枯れを除いた金地上部は610-744g/m^2の範囲内であり5調査草地の差は小さかった。しかしながら,火入れ中止草地の立枯れは,火入れ継続草地に比べて大きく,中止6年目の草地ではおよそ8倍の量を示した。火入れ中止草地のリターは162-602g/m^2であったが,火入れ継続草地のリターはごく少量であった。リターを含めた全地上部重は火入れ中止6年目の草地は火入れ継続草地のおよそ2倍にもなった。立枯れおよびリター重は中止8年目以降減少傾向を示した。また,火入れ中止草地ではススキの被度,茎数,重量とも継続草地より低く,ススキの単独優占度が低下していると考えられた。火入れ継続草地の全木本現存量は火入れ中止草地に比べて小さく,中止年数とともに全地上部に占める木本現存量の比率が高くなった。遷移度は火入れ継続草地から中止年数とともに上昇する傾向を示した。また種多様度指数は,火入れ中止1年目の草地で最も小さく,火入れ継続草地と中止6年目が同程度,中止8年,30年と経るにしたがって上昇した。以上のことから,火入れの中止は立枯れ量を一時的に増大させることが明らかとなり,火入れが中止された草地植生は徐々に森林へ移行していくことが推察された。
- 日本草地学会の論文
- 2002-12-15
著者
-
平野 清
畜産草地研究所
-
平野 清
九州沖縄農研
-
萩野 耕司
中国農試
-
萩野 耕司
畜産草地研究所
-
中西 雄二
九州沖縄農業研究センター
-
山本 嘉人
九州沖縄農業研究センター
-
進藤 和政
九州沖縄農業研究センター
-
萩野 耕司
九州沖縄農業研究センター
-
平野 清
九州沖縄農業研究センター
-
進藤 和政
九州沖縄農業研究センター:(現)畜産草地研究所山地畜産研究部
-
大滝 典雄
近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
-
大滝 典雄
九州沖縄農業研究センター
-
荻野 耕司
農水省九州農試
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