時間ペトリネットモデルで記述されたサービス仕様からのプロトコル仕様の一合成法

概要

論文の詳細を見る
プロトコル合成法と呼ばれる分散協調システム設計の一支援法がある. 分散協調システムの実装レベルでは, システムの各計算機(エンティティ)ごとに, 他の計算機との通信を含んだ仕様を記述する必要があるが, プロトコル合成法では, 例えは図1(a)のように分散システム全体を一エンティティとみなした場合の仕様(サービス仕様)を記述し, その仕様から図1(b)のように各エンティティごとの仕様の組(プロトコル仕様)が機械的に生成される. 図1(a)の例では, 動作 a, b を並列に実行し,その後 c を実行するように指定されでいるのに対し, 図1(b)のプロトコル仕様では, エンティティ #1, #2 がそれぞれ a, b を実行した後にエンティテイ #3 に対しその実行終了通知メッセージを送信し, エンティティ #3 はそれらを受信した後に c を実行する. このようなプロトコル仕様が機械的に合成されることで, 通信指定に関わる設計者の負担を軽減でき, 誤りをなくすことができる. 近年では動作の生起時刻に制約(動作の時間制約)がある分散システムのサービス仕様からのプロトコル合成法が注目を集めている. 例えば図1(a)のサービス仕様では, 動作 c について"aとbの実行が終了してから3から10単位時間経過までに実行されなければならない"といった時間制約が与えられている. これに対しプロトコル仕様ではエンティティ #1から#3 の通信遅延(2から4単位時間)とエンティティ #2 から #3 への通信遅延(1から3単位時間)を考慮して, aとbの実行終了の通知を受け取ったときには, それらが実行されてから少なくとも1単位時間,高々4単位時間経過しているとみなし, cの時間制約 [3, 10] は,それらの通知を受け取ってから [2(=3-1), 6(10-4)] となっている. このような通信動作それに要する遅延時間を考慮してプロトコル仕様の記述を行うのは設計者にとって負担が大きいため, 時間制約付きのサービス仕様からのプロトコル合成法はリアルタイム分散システムの一支援法として有用であると考えられる. 従来の合成法では計算モデルとして時間制約付きFSM, 時間制約付きLOTOCを用いている. これらは非隣接動作間の時間制約も指定できる一方で, すべてのエンティテイが正確に同期した時計(大域時計)を持つと仮定し, さらに並列同期動作やシステムの状態変数を扱えないクラスにサービス仕様を制限するなど, 幾つかの制約をおいいる. 本稿では(1)時間ペトリネットの状態変数付きモデルで記述された分散システムのサービス仕様,(2)入出力ゲート (システム外部とのインタフェース)と状態変数の各エンティティへの配置指定,(3) エンティティ間の各通信路の最小および最大伝送遅延時間, が与えられたとき, 一定の模倣方針のもとでサービス仕様で指定された時間制約を満たすような時間制約を持つ, 同モデルで記述されたプロトコル仕様を自動合成する手法の概略を述べる. 本手法では, 大域時計を仮定せず, かつサービス仕様における状態変数を取り扱うことができる.
1997-08-13

時間ペトリネットモデルで記述されたサービス仕様からのプロトコル仕様の一合成法

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク