NLP2000-15 / NC2000-9 骨格筋張力発生に関わる生体分子の状態遷移確率モデル

概要

論文の詳細を見る
骨格筋の張力は, (1)トロポニンの4個所のCa^<2+>結合部にCa^<2+>が結合することによって制御され, (2)ミオシン頭部のATPaseがATPを加水分解するエネルギーによって発生する.これらはともに, 分子・イオンの確率的な結合・解離の作用によることから, これらの各プロセスを分子・イオンの確率的振る舞いに基づいた統一的なモデルで記述することが可能であると考えられる.本研究では, はじめに, 分子・イオンの結合状態および各状態間の遷移を表すリガンド結合・解離状態遷移モデルを提案した.トロポニンの4箇所のCa^<2+>結合部にCa^<2+>が結合する過程をリガンド結合・解離状態遷移モデルで表現し, トロポニンに結合するCa^<2+>数の実験データから結合・解離に関するモデルパラメータを推定した.さらに, これらのモデルパラメータを用いて, ミオシン頭部によるATP加水分解のプロセスを状態遷移モデルで表した.本モデルから, 筋細胞内Ca^<2+>濃度に応じてミオシン頭部がアクチンを蹴るpower strokeの生起確率を算出したところ, Ca^<2+>濃度に比べブロードかつピーク時間に遅れを持つ骨格筋の張力特性が表現された.
社団法人電子情報通信学会の論文
2000-06-15