母児相関におけるインスリンレセプターの動的調節機構に関する研究特に糖尿病発症妊婦NODマウスにおける検討

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母児相関におけるインスリンレセプターの機能的動態の解析を目的として,特に糖尿病(DM)発症nonobese diabeticマウス(NODマウス)の各臓器より分離した細砲膜分画(10^5×g pellets)と[chemical formula]-インスリンとの結合実験を行つた.得られた成績は以下のごとくである. (1)対照として用いた非妊および妊娠JCL-ICRマウス肝では,インスリン特異的結合は非妊群(26.6±3.2%,M±SD)にくらべ妊娠群では20.7±2.7%と有意に低下した.Scatchard plot法による検討ではこの変化は主に高親和性タイプのレセブターの数の変化に起因するものと思われた.DM発症妊娠NODマウスでは母体肝のインスリン結合は24.3±1.0%であり,対照とした妊娠JCL-ICR群にくらべ明らかに高値であつた. (2)これらのマウスの血中インスリン値は妊娠JCL-ICR母体群で37.3±18.3μU/ml,非妊同群14.8±6.4,さらに妊娠NOD母体群で6.3±4.2で,上述の肝インスリンレセプターと鏡像的な変化を示した. (3)これらのマウスよりの胎仔肝における検討では,母体肝と同様にインスリン結合は,JCL-ICR群胎仔肝で6.8±3.2%を示したのにくらべNOD群胎仔肝では27.0±14.0%と著明な高値を示し,この変化も主に高親和性タイプのレセプター増加によるものと思われた.また胎仔carcassにおいても同様の傾向が観察された. 以上の成績は,DM発症妊娠NODマウスの母体,胎仔におけるインスリン感受性の増加を意味するものであり,インスリンの絶対的な不足状態に対するNODマウス臓器のはたす代謝的適応現象のひとつと考えられた.また,胎仔におけるインスリンレセプターの調節機構に成体と同じくdown regurationメカニズムの関与している可能性が示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-11-01

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