妊娠高血圧症における心房性Na利尿ペプチドの動態 : 動的負荷試験による検討
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概要
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正常妊婦と妊娠高血圧症(PIH)妊婦において, Angiotensin-IIならびにNaCl負荷時の心房性Na利尿ペプチド(ANP)の動態を検討し, 以下の成績を得た. 1. 正常妊婦の血中ANP値: 正常妊婦の血中ANP値は非妊時の105.7±8.4pg/ml (mean±SE)に比べ妊娠8週ですでに119.4±4.5pg/mlと増加した. 以後妊娠経過とともに漸増し, 妊娠24週以降は有意の高値(p<0.05)を示した. 妊娠36週以降には144.6±4.8pg/mlのピーク値を示したが, 分娩中にはさらに225.7±27.1pg/mlと著明な高値になった. 分娩後の血中ANP値は分娩後2時間で86.1±6.1%と有意の低下(p<0.05)を示した. しかし, 産褥経過に伴う変動は産褥5日目までの間では一定の傾向を認めず, 産褥42日目以降において86.0±10.0%の値であった. 2. PIH妊婦の血中ANP値: Third trimesterにおけるPIH妊婦の血中ANP値は軽症例156.7±9.9pg/ml, 重症例165.8±12.2pg/ml, と同時期の正常妊婦例138.2±3.2pg/mlに比していずれも有意の高値であったが, 病態の重症度とは有意の相関を示さなかった. また, 重症例の産褥42日目以降における血中ANP値は112.2±12.9pg/mlであり, 分娩前の値に比して81.0±5.3%の低下を示した. 3. Angiotensin-II負荷と血中ANP値: Angiotensin-II 負荷を行った際の平均血圧の変化量(ΔMAP)と血中ANP値の変化率(ΔANP)との間に, 正常妊婦例ではr=0.68の有意の正の相関(p<0.01)が得られた. 一方, PIH妊婦例においては, 軽症例でr=-0.59の負の相関関係(p<0.01)を認めたものの, 重症例では有意の相関関係は認められなかった. 4. 高張(5%)食塩水負荷と血中ANP値: 高張食塩水負荷において, 正常妊婦例の血中ANP値は食塩水投与開始より終了に至るまで有意の変化を示さず, 食塩水投与終了15分後に初めて15.2±6.2%の有意の増加を示した. PIH軽症妊婦例ではANP分泌動態は正常妊婦例と同様の反応を認めたが, 重症例では食塩水投与開始から食塩水投与終了15分後までの間に明らかな変化を認めなかった. つまり, PIH妊婦では血中ANP値は正常妊婦のそれよりも高値を示すが, Angiotensin-IIや高張食塩水などの負荷時にその分泌は高まらず, 予備能の低下していることが推測されることから, PIHにおいてANPが降圧系ホルモンとしてその病態形成に重要な役割を果たしていることが判明した.
- 1990-03-01
著者
-
望月 眞人
神戸大学医学部産科婦人科学教室
-
望月 眞人
神戸大学医学部産婦人科
-
森川 肇
神戸大学医学部産婦人科学教室
-
山崎 峰夫
神戸大学医学部産婦人科学教室
-
水鳥 真和
産科・婦人科みずとりクリニック
-
水鳥 真和
神戸大学医学部産科婦人科学教室
-
水鳥 真和
済生会兵庫県病院
-
山崎 峰夫
神戸大学 医学部産科婦人科
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