母児相関における糖脂質代謝とインスリンレセプターの動態に関する研究 : ヒトおよびラット脂肪組織における検討

概要

論文の詳細を見る
妊娠母体にみられる高脂血,耐糖能低下といつた糖脂質代謝の特異的メカニズムを明らかにするために,ヒトおよびラット脂肪組織におけるインスリンレセプターの機能的動態を検討し,以下の成績を得た. (1)ラット脂肪組織細胞膜分画(10^5×g分画)とインスリンの特異的結合量は,非妊雌群14.5±3.5%に比べ,L_<20>母体群では8.1±2.1%と有意に低下した(p<0.05).Scatchard plot法による検討では,ラット脂肪組織にはtype1(high affinity and low capacity)とtype2(low affinity and high capacity)の異なるインスリンレセプターが存在し,上述の変化は両レセプターの結合容量の減少によるものと思われた(p<0.05). これらのラットの血清インスリン値は非妊雌群69.0±32.2μU/mlに比べL_<20>母体群166.9±20.8と脂肪組織インスリンレセプターと鏡像的な変化を示した.また,血清TG,FFAはL_<20>母体群で有意に高値を示した. (2)ヒト脂肪組織細砲膜分画(10^5×g分画)とインスリンの特異的結合は,非妊婦29.3±8.9%に比べ妊娠末期妊婦では20.4±6.4%と有意に低下した(p<0.05),Scatchard plot法による検討では,ヒト脂肪組織にも二つのコンポーネントのインスリンレセプターが存在し,非妊婦に比べ妊娠末期妊婦において,両レセプターの結合容量の滅少,特にtype1では有意の滅少が認められた(p<0.05). これらの症例の血清TG,FFAおよび75g OGTT施行時のInsulin Sum.,Glucose Sum.と脂肪組織でのインスリン特異的結合量とは逆相関していることが認められた. 以上の成績より,脂肪組織におけるインスリンレセプターの結合容量の減少が妊娠時に認められるインスリン抵抗性の原因のひとつと考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-11-01

母児相関における糖脂質代謝とインスリンレセプターの動態に関する研究 : ヒトおよびラット脂肪組織における検討

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク