分子生物学的手法による絨毛性疾患のDNAの分析 : 特にhPLならびにhCG(α,β)の遺伝情報について

概要

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正常絨毛ならびにヒト白血球,胞状奇胎,絨毛癌組織より抽出したgenomic DNAについてクローン化したhPL,hCG(α,β)のcomplementary DNA (cDNA)を用いて,各々の遺伝情報部分の構造を検討した.その結果,制限酵素(restriction enzyme)によるrestrictionpattemに関する限り,いずれのDNAもその基本構造に差異はなく,特にhPLmRNAの消失とbCG(α,β)mRNAの相対的増カ目を示す絨毛癌のDNA中にも正常DNAと同一構遺のhPL,hCG(α,β)の遺伝子があり,trophoblastの腫瘍化によるこれらの遺伝子のdeletion(削除)あるいはamplification(増幅)が,この場合起っていないことを明らかにした.また,hCGα遺伝情報部分近傍のpolymorphismをマーカーとして,胞状奇胎の病因論としてのandrogeneticorigin(雄性発生)の妥当性を明らかにするとともに,奇胎後絨毛癌の全例がhomozygous DNAを示したことから,奇胎のheterozygousityが必ずしも続発変化発症のriskfactorではないことを示した.一方,絨毛癌のhCGα情報部分近傍のDNAは全ての例において正常DNAにまれな構造を示したことより,このDNA部分が絨毛癌発症と何らかの関係を持つ可能性を示した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1984-05-01