子宮内圧の変動がもたらす母体循環動態への影響
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概要
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妊娠末期にみられる高血圧発症を分娩発来機構との関連で検討した.妊娠経過に伴う子宮内環境の変化を物理学的な面より把えるべく子宮内圧(resting uterine tonus)の変動を観察し, その変動がも牟らす母体血圧や胎盤ならびに腎循環動態への影響に関し検討を加えた.1)子宮内圧は妊娠中期から末期にかけてほぼ一定であつたが, 分娩発来2〜3週前頃より漸次たかまる傾向がみられ, 特に初産婦に明らかで, 約5mmHg以内のたかまりを示した.また初産婦は経産婦より高い平均内圧を呈した.そして母体血圧も子宮内圧のたかまる時期に一致して上昇を示し, その傾向は初産婦に明らかであつた.さらに同一症例のfollow upにおいても, 子宮内圧のたかまりに応じて母体血圧も上昇する傾向が得られた.2)子宮収縮による内圧のたかまりも, 平均10%強の血圧上昇と, 50%以内の胎盤血流量の減少(平均20〜30%)を招くが, 腎皮質血流量に関しては一定の傾向がみられず, 妊娠犬や猿の実験において, 強いintensityを示す時には, わずかに増加する傾向がうかがわれた.3)一方, 生理的食塩水を羊膜腔内に注入し子宮筋を伸展させることにより子宮内圧をたかめると, 平均10%強の血圧上昇と, 平均30%強の胎盤血流量の減少, そして平均20%強の腎皮質血流量の減少を認めた.以上の検討成績より, 妊娠末期に発症する高血圧は, 子宮内圧のたかまりと密接に関連する結論が導かれたが, 子宮内圧は子宮筋壁張力と子宮内容積とのバランスにより調節されることを考えると, 妊娠末期においては, 子宮筋壁張力は内容物の増大に伴い「許容限界」に接近し, その情報が胎盤や腎循環の低下を媒体として母体に生物学的反応を誘発し, それが母体循環動態の変化として反映されるものとの理解に達した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-07-01
著者
-
須川 佶
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
日高 敦夫
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
日高 敦夫
日本妊娠中毒症学会
-
駒谷 美津男
大阪市立大
-
池田 春樹
大阪市立北市民病院
-
坂本 平年
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
池田 春樹
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
須川 佶
大阪市立大学
-
島津 隆
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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