妊娠時における好中球アルカリフォスファターゼの意義
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概要
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最近Zuckerman(1970)らは, 妊娠時の好中球中の Alkaline phosphatase (L.Alp)活性が, 胎盤性 hormone によつて支配されL.Alp活性の増減は胎盤機能を反映する可能性のあることを示唆した.そこで我々は, 彼等の一連の成績を方法(朝長法)をかえて追試し同様の結果を得たが, 更に, 新しい母体-胎児管理法の確立を目指して, 妊娠状態の異常と L.Alp 活性推移の意義を解析し下記の結果を得た.1) 268例の正常妊婦の妊娠月数に伴う L.Alp 活性は妊娠月数の進行と共に有意に上昇し, 妊娠末期では不安定且つ下降傾向を示す.2) 分娩前, 平均5.5日目に一過性の下降を示し, 分娩時では最高となり分娩後約1週間は活性高値をとるが, 以後漸減し1ヵ月で非妊時活性値に戻る.3) 稽留流産及び胎児胎内死亡例では正常域を脱して有意に低値を示す.4) 切迫流早産及び進行性流早産では, 正常域から逸脱して高値をとるが, 症状の増悪に先立つて, 正常域に復帰後, 再度高値をとり胎児娩出前に低値となる.この特徴的な活性推移から切迫流早産の予後の判定がなし得る.5) 妊娠中毒症7例の L.Alp 活性は, 全て正常の上限又は上方逸脱を認め, 6例は高値を持続しながら分娩を終えたが, 1例は, L.Alp 活性を追跡中急激な下降を認めた.そして, 本症例は結果的に子宮内胎児死亡を来たした.以上の結果から, 母体好中球中のL.Alp活性の変動は, 他の L.Alp 活性変動を来す疾患を除外し得れば, 妊娠維持機構の異常, 具体的には, 母児, 特に胎児の異常をも反映することが明らかになつた.
- 社団法人 日本産科婦人科学会の論文
- 1973-12-01
著者
-
須川 佶
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
荻田 幸雄
大阪市立大学医学部産婦人科
-
川合 謙造
大阪市立大学医学部産婦人科学教室
-
川合 謙造
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
島本 雅典
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
亀井 輝二
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
松本 雅彦
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
長谷川 博規
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
荻田 幸雄
大阪市立大大学院医学研究科生殖発達医学(産科婦人科学)
-
須川 佶
大阪市立大学
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