胎児のTBG,TSHと甲状腺ホルモン動態

概要

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妊娠後期の胎児における各種甲状腺ホルモン(T_4,T_3,rT_3)とTBG,TSHとの関係について検討した.妊娠29週から妊娠42週の臍帯血を採取し,RIAにて測定した.臍帯血のTBG値は18.2±3.2mg/dl(mean±S.E.,n=36)で,妊娠32週以降はほぼプラトーであつた.血清T_3は妊娠週数とともに有意に増加し(n=36,r=0.356,p<0.05),逆にrT_3は妊娠週数とともに有意に減少した(n=37,r=-0.43,p<0.02).TBGとT_4は妊娠32週以降で特に強い正の相関がみられた(n=34,r=0.545,p<0.001).TBGとT_3は妊娠37週以降のtermに限つてのみ有意の正の相関がみられた(n=24,r=0.45,p<0.05).TBGとrT_3は,妊娠29週以降で強い正の相関がみられた(n=36,r=0.65,p<0.001).臍帯血のTSHはpretermでは12.8±2.2mU/ml(mean±S.E.,n=11),termでは8.2±0.8mU/ml(mean±S.E.,n=25)であり,termはpretermに比して有意(p<0.05)に低値であつた.一方,TSHに対する甲状腺の感受性をみるためにT_4/TSHをとると,pretermでは0.65±0.01,termでは1.60±0.16であり,termがpretermに比して有意(p<0.001)に高値を示した.以上より,胎児においてもTBGがT4_,rT_3,T_3の動態に深く関与しており,また,下垂体のTSHに対する甲状腺の感受性が児の成熟とともに高まる可能性が示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-01-01