分子生物学的手法によるhPLならびにhCG(α,β)特異的mRNAの絨毛組織内分布 : 特にtrophoblastの分化ならびに腫瘍化との関係について

概要

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hPLやhCG(α,β)の絨毛組織中産生部位やその生合成の調節については,従来,主にRIA(radioimmunoassay)や免疫組織学的知見により論じられていた.しかし,生合成の本質的機構を解明するためには各点の蛋白に特異的なmRNA(messengerRNA)の動態を検索しなければならない.そこで著者らは分子生物学的手法によりクローン化した各々の蛋白に対応するComplementaryDNAを用いて特異的mRNAの局在を絨毛凍結切片上で観察し以下の結果を得た.hPLもhCG(α,β)も主たる産生部位は特異的mRNAの局在部位から考えてsyncytiotrophoblastである.しかし,hCGαmRNAについては,一部のcytotrophoblastにも明瞭に認められることから,"サブユニットの遺伝子はtrophoblastの分化の早い時期に発現するものと考えられる.一方,hPLは分化の充分に進んだtrophoblastで初めてその遺伝子が発現する.また,絨毛癌ではhPLmRNAが認められたい.この現象はtrophoblastの分化がhPL遺伝子発現の前段階で停止する,いわゆるblockingofdifferentiationによるものと考えられる.以上のことからhPLやhCG遺伝子の発現はtrophoblastの分化や腫瘍化(脱分化)と密接な関係にあることを明らかにした.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1984-03-01