奇胎嚢胞液中の急性期活性物質及び免疫グロブリンに関する研究
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概要
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古来,奇胎発生の本態論に関しては,幾多の説が提起されてきたが,退行性病変とする立場と腫瘍性病変とする立場の2つの代表的な本態観に分けられる.今回は,胞状奇胎すなわちHydatid Vesicleの発生病態を追求する目的でVesicular Fluid中の急性期活性物質及び免疫グロブリンを中心に検討し,そのVesicular Fluidの生成に免疫系,分泌系が如何に関与しているかを目標として本研究を行い次の結果を得た. 1) 嚢胞液中のα_1AT量は,常に母血清より低値を示し,母血清との割合は3.1±0.7を示した. 2) 嚢胞液中のα_1AG量は常に母血清より低値を示しα_1AG量と総蛋白量との割合は,嚢胞液では13.4±3.6,母血清では12.6±1.7とほぼ同じ傾向を示した. 3) 嚢胞液中のIgG, IgA, IgMは,共に血清より低値を示し,平均して母血清の1/8〜1/10量の値を示した. 4) 嚢胞液の総蛋白量は,母血清総蛋白量の約1/7の値を示した. 5) 胎児血中には,存在しないとされるIgAを嚢胞液中に認めることができた. 6) 嚢胞液中にはSecretory Pieceを全例に証明しえなかつた.したがつて,IgA系の存在はほゞ否定できると考えた. 以上の実験成績から,嚢胞液中の急性期活性物質,免疫グロブリンについても,その物質の種類により嚢胞液の濃度と母血清の濃度比が異なつていることからして嚢胞液は,単なる漏出によるものではなくて,Active Transportationの機序が示唆された.これは正常の絨毛細胞の機能として解しうるものと思うが結論ずけるには,正常絨毛の間質内の貯溜液や卵巣嚢腫の内容液についても本研究と同様の検索をすすめる必要があろう.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-02-01
著者
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