競合的ラテックス凝集阻止反応を利用した妊婦尿中エストリオールの測定

概要

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妊娠末期における胎児の発育状態,あるいは,胎児胎盤系の機能検査法としての尿中Estriol(E_3)測定の意義については,すでに高く評価されている.その測定法に関しても多くの報告があるが手技が複雑であったり,測定に長時間を要するたど,診断目的からはなお十分とはいい難い.元来本測定法の意義は,妊娠末期の胎児胎盤機能を外来においてscreeningすることにあるのでその測定値が厳密であることよりは迅速性が望まれる.現在使用されている測定法で最も速いHaemagglutination Inhibition Reaction(HAIR)でも最低2時間を要するので外来検査法としてはなお不便なことが多い.今回われわれは,Estriol-16,17-dihemisuccinate-BSAの投与により作製した抗E_3家兎血清をLatex粒子にcoatingし,これがEstrone-BSA cojugateと尿中Estrogen(主としてE_3)と競合的に反応することを利用したLatex Agglutination Inhibition Reaction-SLIDE (LAIR-SLIDE) 法を用いて,3分間と云う短時間のうちに妊婦尿中E_3を半定量的に,測定しその結果を比較検討した.本抗体の性格をRadioimmunoasay (RIA) で検討したところEstrone (E_1),Estradiol (E_2),Estriol (E_3) およびその16,17-conjugateとは高い結合率を示し,3位のconjugateとは低い結合率を示した.本実験では妊婦尿中E_3の本法による測定成績を赤血球凝集阻止反応(HAIR)及びRIAと比較した.また血中total E_3をRIAで,これと同時に尿中E_3を本法によって測定し,さらに血中,尿中E_3をそれぞれRIAによって測定しこれらの測定値間の相関性を比較した.本法による尿中E_3の測定結果では従来のHAIR法とはr=0.949,RIA法とはr=0.829と高い相関関係がみられた.一方RIAで測定した血中E_3値と本法による尿中E_3値との間ではr=0.497でありRIAにより測定した血中,尿中E_3の抱合型の量的相違も原因となり得るであろうが抱合型のrenal clearanceの相違によるものが大きいと考えられる.本法による妊婦尿中E_3の測定値は従来の免疫学的方法による測定値と高い相関関係を有し,しかも簡単な操作法で短時間で結果判定出来ると云うことは,外来診療におけるhigh risk pregnancyのscreening testとして大きな意義を有するものと考える.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1979-03-01

競合的ラテックス凝集阻止反応を利用した妊婦尿中エストリオールの測定

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