特に妊娠初期における尿中estrogenのHAIRによる定量とその意義について

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Gurpide et al.の方法により牛血清アルブミンにE_3-16-17-dihemisuccinateを付加した抗原を用いて作製した抗体による免疫学的方法(HAIR)により,妊娠初期の低レベルの尿中estrogenを原尿からの希釈系列につき測定した.測定感度は0.1μg/mlであり,妊娠5週目より測定可能であった.HAIRによる測定値とRadioimmunoassay(RIA)による測定値とは,r=0.985と極めて高い相関を示した.原尿からの希釈系列では反応阻害物質の影響が考えられるので,原尿を煮沸したものとそうでないものとを比較したところ,end pointは一致し,相関はr=0.95と極めて高かった.尿中estrogenのconjugateの割合が妊娠初期と末期とでは異なるのではないかという点に関し,妊娠初期尿を12規定塩酸で煮沸し,加水分解後ether抽出を行ったものと無処理のものとをHAIRで夫々測定した.両者の測定値の相関はr=0.946と高く,この関係は妊娠中後期でも同様であった.以上より,妊娠初期尿を原尿からの希釈系列でHAIRで測定して支障がないことが判明したので,87例の正常妊娠初期尿につき,無処理濾過尿を原尿からの倍数希釈系列でHAIRにより測定した.妊娠週数に応じての尿中estrogenの変動パターンは,13〜14週までは増加が緩慢であるが,妊娠15〜16週に至って急上昇した.一方流産徴候のあるもののうち,妊娠中絶に終わったいわゆる不成功例は全例0.1μg/ml以下で妊娠週数が進んでも回復しなかったのに反し,妊娠持続に成功したグループは正常妊娠例の測定値に接近し,ある程度以上のレベルを保ち,妊娠週数が進むにつれて不成功例とはその対比がより顕著になった.このHAIRによるE_3測定法は操作が簡単であり抗体も精製されているので,原尿からの希釈系列で測定可能,即ち妊娠初期の尿中estrogenが測定可能であり,妊娠初期の流産の予後判定上大いに役に立とう.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1975-07-01

特に妊娠初期における尿中estrogenのHAIRによる定量とその意義について

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