妊娠時の内分泌環境に及ぼすBromocriptineの影響に関する研究

概要

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妊娠中の母体血中prolactin(PRL)の上昇については,Tyson et al.の報告以来既に知られているが,そのmechanismはまだ明らかではない.今回我々は,下垂体からのPRL分泌を抑制するbromocriptineを妊娠婦人に投与し,PRLを中心としたpeptide及びsteroid hormoneの変動を調べると共に,妊娠中のPRL分泌機構を解明せんとした.妊娠初期(7〜12週)及び中期(13〜28週)の人工妊娠中絶を適応とする婦人16例,進行流産や子宮内胎児死亡例7名の計23例に対し,bromocriptine 2.5mgを経口投与し,投与前及び投与後60分,120分,180分における血漿中PRL,HCG,HPL,estradiol-17β(E_2),progesterone(P),estriol(E_3),estetrol(E_4),dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)をradioimmunoassayにて測定し,前値に対する百分率を求め,bromocriptineを投与しないcontrol群と比較検討した.実験群での血中PRL・120分値は46.3±5.9%,180分値は29.6±4.2%であり,control群に比し有意に(p<0.01)低下し,また妊娠初期と中期群,及び正常群と流産群の間では有意差を認めなかった.血中E_2は,120分で89.2±7.3%,180分値で89.3±8.6%と有意な変化はみられなかったが,正常妊娠群で10例中4例に180分以内で50%以下に低下した.しかし,妊娠中期ではE_2の低下はみられず,またPRLとE_2の変化に相関はみられなかった.その他,E_3,E_4,P,HCG,HPL,DHEA-Sとも,bromocriptine投与群とcontrol群とで短時間では有意差はみられたかった.以上により,妊娠初・中期婦人の血中ホルモン動態において,bromocriptineは下垂体PRL分泌にのみ,有意な影響を与えることが判明した.また,投与後nausea以外目立った副作用もなく,児への催奇性もないことより,bromocriptineは投与量の問題はあるにせよ,胎児や妊娠維持にとって危険性は少ないと思われた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-10-01

妊娠時の内分泌環境に及ぼすBromocriptineの影響に関する研究

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