卵胞期のestrogen投与の卵胞発育への作用機序について

概要

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正常月経周期をもった8人の成熟婦人の蜘胞期(day 5〜day 10)にestradiol valerianate depot(EV)1日1mg 3日間連日投与し,その後の血中 LH,FSH,estrdiol(E_2),Progesterone(P)の変動をradioimmunoassayにて測定すると同時に,排卵,月経周期への影響を主としてBBTにより観察し,EV投与の卵胞発育への作用機序について考察を加えた.EV投与により血中E_2は4〜5時間後にピークを示し,投与期間中は自然に認められる排卵前のE_2 surgeをややうわまわるレベルを維持していた.EV投与期間中は血中LH,FSHには変化は認められなかったが,EV投与終了日翌日に血中LHは有意の差でもって上昇した.血中PはEV投与後,8例中5例に軽度の増加傾向が認められた.排卵,月経周期への影響をみると,8例中5例にEV投与後平均13.4±3.1日で消腿性出血が認められ,残りの3例は排卵が遅延し,EV投与後平均19±2.6日目に排卵が認められた.EV投与直後の血中Pのわずかな増加は消腿性出血の認められた5例のうち4例,排卵が遅延した3例のうち1例に認められた.消褪性出血の認められた5例については,次周期において全例に排卵が認められたが,そのうちの3例において,BBT上の高温相の長さ及び血中P値から黄体機能不全が推測された.以上の結果から投与されたEVは卵巣への直接作用と同時に,EV投与後の血中LHに変化が認められたことから,視床下部下垂体を介しての卵巣への作用も推測される.消褪性出血の認められた5例のうち3例に,出血後の周期において黄体機能不全が認められたことは,その原因がEV投与によるものであるとすれば,今後卵の発育はいつから始まるのかという間題を考えるのに重要な手がかりを与えるものと思われる.又8例中5例において,EV投与後に血中Pがわずかに増加したことは,投与されたEVの為に卵胞発育に必要なホルモンの分泌過程に乱れが生し,その結果排卵が起きないままに未熟な黄体様変化が生し,その卵の発育はそのまま終了し,次回からは別の卵が発育するという一連の過程が推察され,最近"luteinized unruptured follicle syndrome"ということがいわれているが,この概念を今同の実験結果は一部支持するものといえよう.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1980-03-01

卵胞期のestrogen投与の卵胞発育への作用機序について

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