胎盤Corticotropin Releasing Factor (CRF) 発現動態に関する分子生物学的研究

概要

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最近注目をあびている胎盤におけるCRF産生について, Northern blot並びにin situ hybridizationを用いてそのmRNAの発現動態並びに産生部位を検討し, またCRF, ACTH, cortisolの血中動態を妊娠週数および分娩様式との比較において検討した. その結果, CRF mRNAの産生は妊娠週数の進行とともに増加することが明らかとなつた. またin situ hybridizationにより, CRF mRNAはsyncytiotrophoblastに局在することが判明した. さらに, 母体血中・胎児血中のCRF, ACTH, cortisol値を測定したところ, これらのいずれもが妊娠週数とともに増加し, 特に妊娠末期において急増した. また, 自然分娩例・予定帝王切開例の比較では, cortisol値は自然分娩例で高値であったのに対し, CRF値は逆に帝王切開例において高値であった. さらに, DHAS濃度は母体側に比し胎児側において有意に高く, CRF-ACTH系は胎児副腎でのDHAS 産生を促進していることがうかがわれた. 今回の研究により, CRFの産生部位をmRNAの転写レベルで明らかにすることができ, またその生物学的意義は, 母児の分娩への準備, さらには分娩発来への関与等にある可能性が示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1992-07-01