シバヤギ胎仔における経母獣酸素投与の胎仔血液ガス動態への影響

概要

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胎児仮死に対する経母体酸素療法は広く用いられているが, その基礎的な研究は十分とはいえない. そこで在胎日数134±4日の妊娠シバヤギ5頭を用い経母獣酸素投与の胎仔血液ガスおよび循環動態への影響を調べた. 母獣にフェイスマスクを通して純酸素41/minを60分間投与し, 30分ごとに母仔の動脈血を採取して pH, pO_2, pCO_2, B.E., Hct 値の測定を行った. 1) 酸素投与前の母獣動脈血 pH は7.40±0.01 (mean±SD), pO_2 95.5±19.6mmHg, pCO_2 28.7±4.5mmHg であった. 酸素投与によって母獣pO_2は30分後262.6±75.8mmHg, 60分後207.8±110.1mmHgまで上昇した. pH, pCO_2は酸素投与中有意な変化は示さなかった. 2) これに対して胎仔動脈血 pO_2は18.4±3.0mmHg から30分後24.4±5.8mmHg, 60分後23.6±6.9mmHg と有意に増加した(t=4.81, p < 0.01, t=3.13, p < 0.05). この増加はコントロールのpO_2が高値なはど大きかった. また胎仔 pH は60分後に7.29±0.07から7.25±0.07へと有意に低下した(t=2.52, p < 0.05). また pCO_2, B.E. も有意でないがおのおの上昇, 低下の傾向を示した. 3) 母獣のヘマトクリット値に有意な変化は認められなかったが, 胎仔ヘマトクリット値は60分後に33.9±5.2%から32.8±5.4%へと有意な低下を示した(t=2.85, p < 0.05). 酸素投与中胎仔動脈圧と心拍数に有意な変化は認められなかった. 以上のデータから経母獣酸素投与は胎仔のpO_2の上昇という面からみると, 30分, 60分での pO_2 の値に違いはなく長時間続けても効果は同じであった. さらにすでに pO_2 の低い症例では pO_2 の増加は少なく, さらに60分間続けることによって pH の有意な低下を引き起こすことが示された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1990-12-01

シバヤギ胎仔における経母獣酸素投与の胎仔血液ガス動態への影響

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