孤立した島の風下におけるバンド状対流雲システムの降水強化過程
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概要
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1996年の梅雨期間中、気象庁種子島レーダ及び種子島に設置された名古屋大学大気水圏科学研究所の二台のドップラーレーダによって、ゆっくりと南下するバンド状対流システムの降水が屋久島の風下海上で強化される事例が、しばしば観測された。それらの事例に共通する大気条件は、フルード数0.3〜0.7を満たすような下層での強い西南西風と比較的安定した成層状態であった。主に、6月22日に観測されたバンド状レーダエコーの事例解析と、屋久島の地形の影響を受ける気流系についての数値実験によって、島の風下側における降水強化は次の過程の複合として生じると考えられた。1) ゆっくりと南下するシステム内の下層収束域が、島の地形効果によって変質した下層風によって強められ、システム内の対流雲が発達する。これらの対流雲が、島の風下側に強い降水をもたらす。2) 島の地形効果によって北にそらされた風と地形の影響を受けていない一般風の合流によって、島の北海上に収束域が形成され、そこで新しい対流雲が形成、発達する。次々と形成されるそれらの対流雲がラインとなって風下に流されることにより、島の風下側に降水をもたらす。3) 2)の対流雲の中の降水粒子は、島の南端を回ってきた風により、南下するシステム内の対流雲に供給される。この過程は、2本のバンド状レーダエコーの融合として観測され、島の風下側での効果的な降水形成を引き起こす。
- 2000-02-25
著者
-
民田 晴也
名古屋大学大気水圏研究所
-
金田 幸恵
名古屋大学大気水圏研究所
-
耿 驃
名古屋大学大気水圏科学研究所
-
武田 喬男
名古屋大学大気水圏科学研究所
-
民田 晴也
名古屋大学地球水循環研究センター
-
耿 驃
海洋研究開発機構地球環境変動領域
-
金田 幸恵
地球科学技術総合推進機構(aesto)
-
武田 喬男
鳥取環境大学
-
武田 喬男
名古屋大学
-
民田 晴也
名古屋大学
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